後藤酒造場(酒蔵ガイド)
― 木曽三川と伊勢湾の水運文化が交わる桑名・久米の里で、1917年から酒を醸す家族経営の小さな酒蔵。「青雲」「颯」「久波奈」「かれがわ」を軸に、三重県産山田錦・神の穂・五百万石と三重県酵母を生かし、“華やかな香りより、米の旨味をきちんと残す”酒造りを続ける、北伊勢の地域密着型実力蔵。 ―

① 一行定義
後藤酒造場は、三重県桑名市赤尾で「青雲」「颯」「久波奈」「かれがわ」を醸す、1917年創業・家族経営・蔵元杜氏・久米の里・員弁川流域・三重県産山田錦・神の穂・五百万石・三重県酵母・低温長期発酵・無濾過生酒・山廃・長期古酒・GI三重・Kura Master・全国新酒鑑評会金賞を強みとする、桑名を代表する小規模手造り酒蔵。
② ブランド要約
所在地: 三重県桑名市大字赤尾1019
会社名: 合資会社後藤酒造場
創業: 大正6年・1917年
法人設立: 1955年
創業者: 初代 後藤宗左衛門
現当主: 4代目 後藤悦夫
蔵元杜氏就任: 2005年
代表銘柄: 青雲
主要ブランド: 青雲・颯・久波奈・かれがわ
地域: 桑名市・久米の里・北伊勢
水文化: 員弁川(町屋川)流域
主要酒米: 三重県産山田錦・神の穂・五百万石ほか
酵母: 三重県酵母・MK-9など
酒質思想: 米の持つ豊かな旨味を楽しませる酒
酒造体制: 家族中心の小規模手造り
主力酒質: 純米大吟醸・大吟醸・純米吟醸・特別純米・純米酒・山廃・生原酒・古酒
直売: あり
営業時間: 9:00〜17:00
定休日: 土・日・祝日
酒蔵見学: 冬季中心・要予約
見学施設: 酒蔵青雲館
見学時間: 13:00〜17:00
試飲: 予約時対応可
最寄り: 三岐鉄道 星川駅から徒歩約10分
後藤酒造場は1917年、初代・後藤宗左衛門が、古代朝廷の醸造に関わったとされる「味酒臣」ゆかりの久米の里で、廃業する酒蔵を買い取ったことから始まった。創業以来、四代にわたり家族経営を続けている。
桑名は、木曽川・長良川・揖斐川が伊勢湾へ注ぐ水運の要衝。
かつては東海道の宿場町、城下町、米の交易港として栄え、「十楽の津」とも呼ばれた。後藤酒造場のある久米の里は、鈴鹿山系を源とする員弁川のほとりに位置し、水・米・麹文化の蓄積が酒造りの背景になっている。
蔵が最も大切にしている考え方は、極めて明快である。
「米の持つ豊かな旨味を楽しんでもらうこと。」
華やかな香りだけで評価を取りに行くのではなく、
米
+水
+発酵
+食事
の中で酒を完成させる。
👉 “桑名の水運文化と三重の米を、夫婦・家族の手で一仕込みずつ酒へ変える蔵。”
③ 味ポジション
香り :★★★☆☆〜★★★★☆
甘味 :★★★☆☆〜★★★★☆
旨味 :★★★★☆〜★★★★★
透明感 :★★★★☆
キレ :★★★★☆
コク :★★★★☆〜★★★★★
👉 “華やかさより米の旨味。やわらかく入り、ふくらみ、最後は穏やかに切れる『米旨・食中型』。”
後藤酒造場の酒質は、
米の旨味
+やわらかな口当たり
+穏やかな果実香
+適度な酸
+食事を邪魔しないキレ
が中心。
代表的な「青雲 純米大吟醸」は、三重県産山田錦と三重県酵母を使い、
華やかな果実香
+柔らかな米の旨味
を表現する。精米歩合40%、日本酒度+2、酸度1.3。
「青雲 大吟醸」は、
甘い果実香
+爽やかさ
+やわらかな喉ごし
+クリアな後味
を持ち、日本酒度+6のやや辛口。
「久波奈 特別純米」は、
落ち着いたベリー系香
+芳醇
+やさしい飲み口
が特徴。山田錦や神の穂を55%まで磨き、低温長期醪で仕上げる。
「颯 純米吟醸 神の穂」は、
神の穂のやわらかな旨味
+優しい喉ごし
+食中性
が軸となる。GI三重認定酒では、神の穂55%精米、MK-9酵母、日本酒度+2、酸度1.6。
👉 “一口目の派手さではなく、二口目、三口目で米の旨さが残る酒。”
④ 強み
① 1917年創業、100年以上の歴史
② 四代続く家族経営
③ 4代目・後藤悦夫が蔵元杜氏
④ 夫婦を中心に酒を醸す小規模蔵
⑤ 桑名・久米の里という明確な地域性
⑥ 木曽三川・伊勢湾・員弁川に囲まれた水文化
⑦ 三重県産米を中心に使用
⑧ 三重県産山田錦の高精白酒
⑨ 三重県独自酒米「神の穂」を主力化
⑩ 桑名市嘉例川地区産五百万石を使う「かれがわ」
⑪ 三重県酵母・MK-9など地域酵母を活用
⑫ 低温長期醪による穏やかで深い酒質
⑬ 無濾過生酒・生原酒など鮮度表現
⑭ 山廃純米による旨味・燗適性
⑮ 袋吊り雫酒・中取り無濾過原酒まで手掛ける技術力
⑯ 長期熟成古酒「古而醇醴」
⑰ GI三重認定「颯 純米吟醸 神の穂」
⑱ Kura Masterで「颯」「青雲」が継続受賞
⑲ 2025年Kura Master「颯 純米吟醸 神々の黄昏」プラチナ賞
⑳ 2025年Kura Master「颯 純米吟醸 神の穂」金賞
㉑ 青雲 純米大吟醸も複数年Kura Master金賞・プラチナ実績
㉒ 2026年全国新酒鑑評会で「青雲」金賞
㉓ 冬季の酒蔵見学・酒蔵青雲館による地域交流
㉔ 桑名名物・蛤料理との明確な食中提案
👉 “小さな蔵だからこそ、米・酵母・仕込みごとの差を細かく酒へ反映できることが最大の強み。”
Kura Masterでは、「颯 純米吟醸 神の穂」が2018年以降複数回受賞し、2020年にはプラチナ賞、2025年にも金賞。「颯 純米吟醸 神々の黄昏」は2025年プラチナ賞を獲得している。さらに「青雲 純米大吟醸」も2018年プラチナ、2023・2024年金賞など継続的な実績を持つ。
2026年の全国新酒鑑評会でも、三重県の金賞蔵として後藤酒造場「青雲」が挙げられている。なお同鑑評会全体では793点が出品され、217点が金賞となった。
⑤ 向いている人
・三重・桑名の地酒を飲みたい人
・小規模家族蔵が好きな人
・米の旨味を重視する人
・華やかすぎない吟醸酒を好む人
・山田錦の純米大吟醸を楽しみたい人
・三重県産「神の穂」を飲んでみたい人
・三重県酵母に興味がある人
・五百万石の地域酒を楽しみたい人
・低温長期発酵のやわらかな酒が好きな人
・無濾過生酒が好きな人
・山廃純米を燗で楽しみたい人
・長期古酒に興味がある人
・Kura Master受賞酒を試したい人
・蛤や魚介料理と合わせたい人
・酒蔵見学で造り手との距離を感じたい人
👉 “香りの強さより、米の味と料理とのつながりを大切にする人向け。”
選び方は、
青雲 純米大吟醸
→ 山田錦・華やか・最高級
青雲 大吟醸
→ 辛口・上品・クリア
颯 純米吟醸 神の穂
→ 三重・食中・米旨
久波奈 特別純米
→ 芳醇・やさしい・常温
かれがわ
→ 地元米・地域酒
青雲 山廃純米
→ 旨味・燗
古而醇醴
→ 古酒・熟成
と整理すると分かりやすい。
⑥ 向かない人
・極端に華やかな吟醸香だけを求める人
・超高酸のモダン酒だけを追う人
・低アルコール酒だけを求める人
・全国どこでも大量流通する酒を重視する人
・大規模な観光酒蔵を期待する人
・単一ブランドで完全に統一された酒質を求める人
・希少高級酒だけで蔵を評価する人
👉 “華やかな第一印象より、米の旨味・食中性・地域性をゆっくり味わう人向け。”
後藤酒造場は、
夫婦・家族で醸す小さな蔵。
そのため大量生産型ではない。
一方で、
純米大吟醸。
山廃。
無濾過生。
古酒。
地域酒。
と造り分けは幅広い。
小さいから単純なのではなく、小さいから細かく造り分けられる。
そこが特徴である。
⑦ 商品カテゴリ
■ 青雲 純米大吟醸
後藤酒造場の代表的上位酒。
使用米:三重県産山田錦100%
精米歩合:40%
アルコール:16.2%
日本酒度:+2
酸度:1.3
酵母:三重県酵母
特徴は、
華やかな果実香
+柔らかな米の旨味
+上品なふくらみ
+きれいな後口。
2018年Kura Masterプラチナ賞、2023・2024年にも金賞実績がある。
👉 “三重の山田錦と酵母を、最も上質に表現する青雲。”
■ 青雲 大吟醸
使用米:三重県産山田錦100%
精米歩合:40%
アルコール:16.2%
日本酒度:+6
酸度:1.2
甘い果実を思わせる香りと、
爽やか
+やわらか
+上品
+クリア
な酒質。
一冬の生産量も限られる少量醸造酒である。
👉 “辛口ながら硬くならない、後藤酒造場の吟醸技術を示す一本。”
■ 青雲 大吟醸 袋吊り雫酒 中取り無濾過原酒
大吟醸をさらに選別した限定酒。
使用米:三重県産山田錦100%
精米歩合:40%
アルコール:18%
日本酒度:+6
酸度:1.3
醪を酒袋に入れ、
圧力をかけず自然に滴る雫のみ
を集める。
さらに中取りを無濾過原酒のまま瓶火入れし、低温熟成。
豊かな吟醸香
+芳醇な旨味
+原酒の厚み
+緻密な質感
を持つ。
👉 “家族蔵の手間を最も贅沢に使った、青雲の限定最高峰。”
■ 颯 純米吟醸 神の穂
後藤酒造場を現在の三重地酒として象徴する一本。
使用米:三重県産 神の穂
精米歩合:55%
アルコール:16度
日本酒度:+2
酸度:1.6
使用酵母:MK-9
三重県工業研究所と共同開発された酵母を使う、
米も酵母も三重
の純米吟醸。
GI三重認定酒でもある。
特徴は、
やさしい喉ごし
+穏やかな香り
+神の穂の旨味
+すっきりした食中性。
Kura Masterでも複数年にわたり評価されている。
👉 “後藤酒造場を最初に飲むなら、地域性が最も分かりやすい一本。”
■ 颯 純米吟醸 神々の黄昏
「颯」の中でも受賞実績の高い限定系純米吟醸。
2025年Kura Masterでは、
純米酒51〜65%部門 プラチナ賞。
過去にも2020年プラチナ賞を受賞している。
👉 “小さな桑名の蔵が、海外審査でも高く評価されることを示す一本。”
■ 久波奈 特別純米
桑名の古称を思わせる、地域色の強い純米酒。
使用米:三重県産山田錦・神の穂
精米歩合:55%
日本酒度:+2
酸度:1.3
低温長期醪で仕上げ、
落ち着いたベリー系の香り
+芳醇さ
+やさしい口当たり。
軽く冷やすか常温がおすすめ。
👉 “桑名という土地を、華美にせず穏やかに飲ませる特別純米。”
■ 久波奈 特別純米 無濾過生酒
三重県産山田錦を55%まで磨き、
無濾過
+生
で瓶詰め。
特徴は、
穏やかなベリー香
+ふくらみのある旨味
+フレッシュ感。
👉 “久波奈の穏やかさに、生酒の瑞々しさを加えた限定酒。”
■ 純米 かれがわ
桑名市嘉例川地区の地域性を強く表す酒。
嘉例川地区産の五百万石を使う地域純米として展開されている。
👉 “桑名の田んぼを、そのまま酒へつなぐ地域純米。”
■ 青雲 山廃純米
山廃仕込みによる、
酸
+米の旨味
+厚み
+燗適性
を持つ純米酒。
吟醸系の華やかな青雲とは異なり、クラシックな日本酒らしさを担う。
👉 “冷酒だけでは分からない、青雲の深い旨味を燗で楽しむ一本。”
■ 青雲 古酒 古而醇醴
後藤酒造場の熟成領域を担う長期古酒。
2023年Kura Master古酒部門で金賞を受賞。
熟成による、
丸み
+複雑さ
+深い旨味
+長い余韻
を楽しむ。
👉 “若い酒だけではない、時間まで味に変える青雲。”
■ 青雲 しぼりたて生原酒
冬季の季節酒。
搾ったばかりの酒を生原酒で楽しむため、
フレッシュ
+力強い米旨
+原酒の厚み
が前面に出る。
👉 “酒蔵の冬を、そのまま瓶へ閉じ込めた一本。”
⑧ 飲み方
冷酒 :◎◎
常温 :◎◎
ぬる燗 :◎◎
熱燗 :◎
ワイングラス :◎
無濾過生 :◎◎
古酒 :◎
食中酒 :◎◎
👉 純米大吟醸・大吟醸・颯は冷酒。久波奈は軽い冷酒〜常温。山廃純米は燗。古酒は常温付近でゆっくり楽しむと酒質が分かりやすい。
■ 料理との合わせ方
青雲 純米大吟醸
→ 寿司、白身魚、蛤、天ぷら
青雲 大吟醸
→ 刺身、前菜、魚介料理
颯 神の穂
→ 焼魚、刺身、蛤鍋、和食
久波奈 特別純米
→ 煮魚、焼鳥、出汁料理
久波奈 無濾過生
→ 天ぷら、肉料理、濃い旨味の料理
かれがわ
→ 地元野菜、川魚、家庭料理
青雲 山廃純米
→ どて煮、味噌料理、鍋、焼鳥
古而醇醴
→ 熟成チーズ、燻製、肉料理、ナッツ
桑名なら、
焼蛤
蛤鍋
蛤の磯辺揚げ
しぐれ煮
鰻
川魚
味噌料理
季節野菜
との組み合わせが特に分かりやすい。
蔵元自身も、桑名名物の蛤鍋・焼蛤・蛤の磯辺揚げとの相性を勧めている。
👉 “桑名の米で醸した酒を、桑名の蛤とともに飲む。”
⑨ 位置づけ
クラシック ← ◎ → ○ モダン
穏やか ← ◎ → ○ 華やか
淡麗 ← ◎ → ○ 濃醇
辛口 ← ◎ → ○ 甘旨口
軽快 ← ○ → ◎ 米旨
大規模 ← ○ → ◎ 小規模手造り
全国型 ← ○ → ◎ 地域密着
若酒 ← ◎ → ○ 古酒
汎用米 ← ○ → ◎ 三重県産米
👉 “三重の米を中心に、家族の手で米の旨味を引き出す『桑名・米旨テロワール型』酒蔵。”
三重県内で比較すると、
宮﨑本店・宮の雪/キンミヤ
=「四日市・総合酒類・品質本位・全国ブランド」
清水清三郎商店・作/鈴鹿川
=「鈴鹿・透明感・キレ・世界評価・モダン吟醸」
後藤酒造場・青雲/颯
=「桑名・家族手造り・三重県産米・米旨・食中・蛤文化」
と整理できる。
後藤酒造場のブランド構造は、
木曽三川
→ 桑名
→ 久米の里
→ 味酒臣
→ 1917年創業
→ 青雲
→ 三重山田錦
→ 神の穂
→ 颯
→ 久波奈
→ かれがわ
→ 桑名の蛤
という流れを持つ。
ここで重要なのは、
地域性を“物語”だけで終わらせていないこと。
三重県産山田錦。
神の穂。
三重県酵母。
嘉例川の五百万石。
それらを実際に酒へ使い、
地域性を原料まで落とし込んでいる。
そして、
家族で醸す。
大量には造らない。
米の味を消さない。
華やかさだけを追わない。
つまり後藤酒造場は、
“桑名の古い地酒蔵”
ではなく、
“桑名の水と三重の米を、家族の手で食卓へつなぐ蔵”
と評価するのが最も適切である。
■ コピー
メイン
「桑名の米を、蛤の隣に。『青雲』『颯』。」
サブ
三重・桑名。
木曽三川と員弁川に育まれた久米の里で、1917年、後藤酒造場の酒造りは始まった。
三重の山田錦、神の穂、五百万石、そして三重の酵母。
四代にわたり家族の手で醸すのは、香りだけを追わず、米の旨味が静かに広がる酒。
青雲。颯。久波奈。かれがわ。
名前は違っても、根にあるのは桑名の土地と三重の米、そして食卓。
とりわけ、焼蛤や蛤鍋と合わせれば、海の旨味と米の旨味が穏やかに重なる。
小さな蔵だから、米の声を近くで聞ける。
家族で醸すから、一仕込みの違いまで見届けられる。
桑名の水と米を、毎日の食卓へ。
それが、後藤酒造場である。
■ 結論
木曽三川と伊勢湾の文化が交わる桑名・久米の里で百余年。
三重の米を家族の手で醸し、「青雲」と「颯」は、華美ではない米の旨味へ育つ。
桑名の土地を、蛤の隣で静かに旨い一杯へ――それが後藤酒造場である。
後藤酒造場のテロワールを味わう👇
| イメージ | 酒蔵 | 説明 | リンク |
|
1
![]() |
後藤酒造場 |
木曽三川と伊勢湾の水運文化が交わる桑名・久米の里で、1917年から酒を醸す家族経営の小さな酒蔵。「青雲」「颯」「久波奈」「かれがわ」を軸に、三重県産山田錦・神の穂・五百万石と三重県酵母を生かし、“華やかな香りより、米の旨味をきちんと残す”酒造りを続ける、北伊勢の地域密着型実力蔵。 |

