藤本酒造(酒蔵ガイド)
― 甲賀忍者の里・水口で1764年から酒を醸す老舗酒蔵。「神開」を軸に、山村神社の神託によって掘り当てたと伝わる清冽な井戸水と、山田錦・吟吹雪・玉栄・日本晴など滋賀の米を生かす。伝統的な山廃・生酛・水酛から、低アル・発泡・甘酸・高麹歩合まで幅広く挑み、“米ごとの個性をそのまま酒へ開く”甲賀の革新型地酒蔵。

① 一行定義
神託の井戸水と近江米で「神開」を醸す、1764年創業の甲賀の酒蔵。
② ブランド要約
所在地: 滋賀県甲賀市水口町伴中山696
会社名: 藤本酒造株式会社
創業: 明和元年・1764年
代表者: 藤本 信行
代表銘柄: 神開
旧銘柄: 宝一
地域: 甲賀市・水口・甲賀忍者の里
仕込水: 山村神社の神託を受け掘削したと伝わる井戸水
水質特性: 鉄分が極めて少なく、ミネラル分を含む清冽な水
主要原料米: 滋賀県産山田錦・吟吹雪・玉栄・日本晴ほか
酒造思想: 地の恵み・和醸良酒
主力酒質: 純米大吟醸・純米吟醸・特別純米・純米酒・山廃・生酛・水酛・生原酒・発泡酒
直売: あり
営業時間: 8:30〜17:30
休業日: 土・日・祝日
オンライン販売: あり
藤本酒造の歴史で最も象徴的なのは、
酒名「神開」の由来。
創業当初は「宝一」の名で酒を造っていたが、酒質に悩み、山村神社の神託を受けて井戸を掘ったところ、良質な水が湧いたと伝わる。
その水と近江米から良酒が生まれたため、
「神が開いた酒」=神開
と名付けられた。
現在も蔵が重視するのは、
地の恵み。
山田錦。
吟吹雪。
玉栄。
日本晴。
それぞれの米を同じ味へ寄せるのではなく、
山田錦は堂々と。
吟吹雪はやさしく。
玉栄は力強く。
日本晴は親しみやすく。
米の個性そのものを酒へ出すことを目指している。
そして蔵の根にある言葉が、
「和醸良酒」。
人の和が良い酒を生むという考え方である。
👉 “神が開いた水と近江の米を、人の和で酒へ開く蔵。”
③ 味ポジション
香り :★★★☆☆〜★★★★★
甘味 :★★☆☆☆〜★★★★★
旨味 :★★★★☆〜★★★★★
透明感 :★★★☆☆〜★★★★★
酸 :★★★★☆〜★★★★★
キレ :★★★★☆〜★★★★★
コク :★★★★☆〜★★★★★
👉 “米旨の重厚酒から甘酸低アルまで振幅が大きい『甲賀・多面発酵型』。”
藤本酒造の特徴は、
酒質を一方向に固定していないこと。
定番「大自然しんかい」は、
穏やかな香り
+幅のある旨味
+濃醇辛口。
「神開蔵」は、
派手すぎない香り
+熟した米の旨味
+滋味深さ。
「leggero」は、
軽い甘味
+ジューシーな酸
+低アルコール
+さらりとした後口。
「あまずっぱい」は、
リンゴ酸
+甘味
+フレッシュ感。
「激辛口」は、
日本酒度+20
+高濃度
+米の旨味。
つまり神開は、
濃醇辛口から甘酸・発泡まで、発酵設計そのものを楽しむ蔵
といえる。
④ 強み
① 1764年創業、260年以上の酒造史
② 山村神社の神託に由来する「神開」という明確な物語
③ 鉄分が極めて少ない清冽な井戸水
④ 滋賀県産米を中心とする地元原料主義
⑤ 山田錦・吟吹雪・玉栄・日本晴を明確に使い分ける
⑥ 契約農家と米づくりから関わる姿勢
⑦ 「和醸良酒」という明確な蔵哲学
⑧ 純米大吟醸から普通酒まで幅広い構成
⑨ 山廃仕込みを継続
⑩ 生酛仕込みを商品化
⑪ 水酛まで取り組む伝統発酵技術
⑫ 2026年SAKE COMPETITION「純米原酒 水酛」モダンナチュラル部門4位・GOLD
⑬ 袋吊り・低温熟成の最高級純米大吟醸「紫水」
⑭ 無濾過原酒・本生酒を多数展開
⑮ 低アルコール14%台の「leggero」
⑯ アルコール8%の純米低アル発泡酒
⑰ リンゴ酸を生かす「あまずっぱい」
⑱ 日本酒度+20の「激辛口」
⑲ 麹比率60%の「麹マシマシ」
⑳ 熟成酒「幾夏越」まで展開
㉑ 燗酒向け「ひげ」の受賞実績
㉒ 「大自然」「神開蔵」など日常酒も重視
㉓ 大正期ラベルを再解釈したレトロシリーズ
㉔ 伝統技法と現代的商品開発を同時並行できる小回りの良さ
👉 “最大の強みは、伝統酒を守るだけでなく、発酵条件そのものを大胆に変えながら『神開らしさ』を広げていること。”
特に2026年SAKE COMPETITIONでは、
「神開 純米原酒 水酛」
がモダンナチュラル部門で4位・GOLD。
古い製法である水酛を、現代的評価につなげている点は、藤本酒造の現在地をよく示している。
⑤ 向いている人
・滋賀・甲賀の地酒を飲みたい人
・近江米の違いを楽しみたい人
・山田錦・吟吹雪・玉栄・日本晴を比較したい人
・濃醇辛口が好きな人
・米の旨味を重視する人
・生酛・山廃・水酛に興味がある人
・無濾過生原酒が好きな人
・甘酸っぱい酒を試したい人
・低アルコール日本酒に興味がある人
・スパークリング日本酒が好きな人
・燗酒が好きな人
・熟成酒を楽しみたい人
・日本酒の発酵そのものを面白いと感じる人
・伝統蔵の実験的商品を追いたい人
👉 “同じ蔵で、辛口・甘酸・生酛・水酛・発泡まで横断して飲みたい人向け。”
選び方は、
紫水
→ 最高級・山田錦・袋吊り
みやの四季
→ 純米大吟醸・芳醇・無濾過原酒
大自然
→ 濃醇辛口・食中
神開蔵
→ 熟した米旨・落ち着き
ひげ
→ 燗・玉栄・吟吹雪
水酛
→ 伝統発酵・現代評価
leggero
→ 軽快・甘酸・低アル
あまずっぱい
→ リンゴ酸・フレッシュ
激辛口
→ +20・高濃度・米旨
麹マシマシ
→ 麹比率60%・濃厚
と整理すると分かりやすい。
⑥ 向かない人
・一種類の統一された酒質だけを求める人
・淡麗辛口だけを好む人
・華やかな純米大吟醸だけを飲みたい人
・実験的な酒質を避けたい人
・酸味のある日本酒が苦手な人
・濁り・生原酒・熟成酒を好まない人
👉 “一つの完成形より、発酵・米・温度による変化そのものを楽しめる人向け。”
藤本酒造は、
伝統の神開
だけではなく、
甘酸。
発泡。
高麹。
低アル。
激辛。
水酛。
熟成。
と、方向性の違う酒を積極的に造る。
そのため、
一本だけを飲んで蔵全体を判断するより、複数商品を比較することで本質が見える酒蔵
である。
⑦ 商品カテゴリ
■ 神開 純米大吟醸 紫水
藤本酒造の最高峰。
使用米:兵庫県産山田錦100%
精米歩合:40%
アルコール:16%
日本酒度:±0
醪を袋へ入れ、自然に滴る雫だけを集め、
-2℃で低温熟成。
特徴は、
豊かな吟醸香
+きめ細かな旨味
+深いコク
+爽やかな締まり。
👉 “神開の吟醸技術を、最も繊細に磨いた一本。”
■ 神開 純米大吟醸 みやの四季
使用米:兵庫県産山田錦100%
精米歩合:40%
アルコール:16%
無濾過原酒。
特徴は、
芳醇な吟醸香
+淡麗さ
+深い旨味。
👉 “香りと原酒の厚みを両立する純米大吟醸。”
■ 神開 純米大吟醸 開運七福神
使用米:山田錦100%
精米歩合:50%
アルコール:16%
香り高い原酒を細かく調整し、
柔らかさ
+透明感
+滑らかな旨味
へ仕上げる。
👉 “上位酒を、より軽やかで親しみやすく見せる純米大吟醸。”
■ 神開 特別純米 大自然しんかい
神開の定番特別純米。
使用米:滋賀県産米100%
精米歩合:60%
日本酒度:+3
アルコール:15%
特徴は、
穏やかな香り
+幅のある旨味
+濃醇辛口。
👉 “藤本酒造の日常食中酒を知る基準酒。”
■ 神開 純米吟醸 神開蔵
使用米:滋賀県産米
精米歩合:55%
アルコール:16%
火入れ後、蔵内で一定期間落ち着かせてから出荷。
特徴は、
派手すぎない香り
+熟した米の旨味
+滋味深さ。
👉 “華やかさより、時間と米の味を楽しむ純米吟醸。”
■ 神開 特別純米 ひげ
使用米:滋賀県産玉栄・吟吹雪
燗酒コンテスト金賞実績を持つ。
冷やではすっきり。
温度が上がるにつれて、
米旨
+ふくらみ
+コク
が強くなる。
👉 “温めることで完成する神開。”
■ 神開 純米原酒 水酛
古式の水酛を現代へ取り込む商品。
2026年SAKE COMPETITIONモダンナチュラル部門で、
第4位・GOLD。
👉 “古い発酵技法を、現代の味覚へつなぐ神開の象徴。”
■ 神開 生酛純米原酒 甲賀山田錦
甲賀・滋賀の山田錦を使い、
生酛
+原酒
+地域米
を組み合わせる。
公式オンラインストアでも生酛純米原酒の展開が確認できる。
👉 “甲賀の米を、伝統酒母で力強く表現する一本。”
■ 神開 一番汲み
冬季限定の初しぼり。
使用米:滋賀県産日本晴
精米歩合:60%
アルコール:18%
日本酒度:+4
特徴は、
辛口
+微発泡
+軽快なキレ
+新酒らしい勢い。
👉 “酒造りの冬、最初の勢いをそのまま瓶へ。”
■ 神開 特別純米 leggero 本生酒
アルコール:14.5%
日本酒度:-16
使用米:山田錦・滋賀県産米
精米歩合:60%
テーマは、
「さりげなく、そっと寄り添う酒」。
特徴は、
軽い甘味
+ジューシーな酸
+瑞々しさ
+さらりとしたキレ。
👉 “神開の重厚なイメージを軽やかに更新する一本。”
■ 神開 特別純米 あまずっぱい 本生酒
使用米:滋賀県産米100%
精米歩合:60%
アルコール:14%
日本酒度:-29
リンゴ酸を生かし、
甘味
+酸
+フレッシュ感
を強く出す。
👉 “従来の神開から意図的に離れた、甘酸モダン酒。”
■ 神開 純米 低アルコール発泡酒
使用米:滋賀県産米100%
精米歩合:70%
アルコール:8%
日本酒度:-50
特徴は、
力強い泡
+デラウェア系の果実味
+酸
+グレープフルーツのような軽い苦味。
👉 “日本酒を、スパークリングワイン感覚へ広げる一本。”
■ 神開 純米原酒 激辛口 本生酒
使用米:滋賀県産米100%
精米歩合:60%
アルコール:19%
日本酒度:+20
神開史上でも特に辛口。
ただし、
辛味だけでなく米の旨味・甘味も残す。
👉 “辛口を極端まで押しながら、米味を捨てない一本。”
■ 神開 純米原酒 麹マシマシ
使用米:山田錦100%
精米歩合:60%
アルコール:16%
日本酒度:-7
通常は米麹約20%が一般的なところ、
米麹60%。
麹そのものの風味を強く出す実験的商品。
👉 “『軽い酒』への逆張りから生まれた、麹を味わう日本酒。”
■ 神開 完熟純米 幾夏越
熟成酒。
複数の熟成ストックをブレンドし、
熟成感
+丸み
+厚み
+燗適性
を狙う。
👉 “新酒だけではなく、時間まで味に変える神開。”
■ 神開 上撰
長年地元で飲まれてきた定番酒。
使用米:滋賀県産米100%
精米歩合:70%
アルコール:15%
日本酒度:+2
冷酒・常温・燗まで幅広く対応する。
👉 “実験的な酒だけでは見えない、神開の日常の原点。”
⑧ 飲み方
冷酒 :◎◎
常温 :◎◎
ぬる燗 :◎◎
熱燗 :◎◎
ワイングラス :◎◎
生原酒 :◎◎
発泡酒 :◎◎
熟成酒 :◎◎
食中酒 :◎◎
👉 純米大吟醸・leggero・あまずっぱい・発泡酒は冷酒。大自然・神開蔵は冷酒〜常温。ひげ・生酛・熟成酒は燗まで温度を上げると旨味が広がる。
■ 料理との合わせ方
紫水・みやの四季
→ 寿司、白身魚、天ぷら、会席料理
大自然
→ 焼魚、煮物、鶏料理、味噌料理
神開蔵
→ 発酵食品、豆腐、煮物、茸
ひげ
→ 鍋、焼鳥、煮込み、燗向き料理
水酛・生酛
→ 発酵食品、肉料理、根菜、チーズ
leggero
→ 白身魚、サラダ、軽い洋食
あまずっぱい
→ チーズ、甘辛料理、中華前菜
発泡酒
→ 前菜、フルーツ、揚げ物
激辛口
→ 刺身、天ぷら、焼魚、塩味の料理
幾夏越
→ 燻製、肉料理、熟成チーズ
滋賀・甲賀なら、
近江牛
鮒寿司
湖魚
赤こんにゃく
日野菜漬
甲賀野菜
発酵食品
近江米
との組み合わせが分かりやすい。
👉 “近江の米で醸した神開を、近江の食卓で温度を変えて楽しむ。”
⑨ 位置づけ
クラシック ← ◎ → ◎ モダン
穏やか ← ◎ → ◎ 華やか
淡麗 ← ◎ → ◎ 濃醇
辛口 ← ◎ → ◎ 甘旨口
軽快 ← ◎ → ◎ 高濃度
日常酒 ← ◎ → ◎ 高級酒
伝統発酵 ← ◎ → ◎ 実験醸造
冷酒 ← ◎ → ◎ 燗
地元酒 ← ◎ → ◎ 全国評価
👉 “神託の井戸水と近江米を核に、伝統発酵と大胆な商品開発を並走させる『甲賀・多面発酵型』酒蔵。”
滋賀県内で比較すると、
浪乃音酒造・浪乃音
=「堅田・家族醸造・小仕込み・酒米多様性」
松瀬酒造・松の司
=「竜王・契約栽培・土壌・テロワール」
北島酒造・御代栄/北島
=「湖南・生酛・完全発酵・熟成・燗」
喜多酒造・喜楽長
=「東近江・麹・自家酵母・たおやか」
藤本酒造・神開
=「甲賀・神託の井戸水・近江米・水酛・生酛・山廃・低アル・甘酸・高麹」
と整理できる。
藤本酒造のブランド構造は、
甲賀
→ 山村神社
→ 神託
→ 井戸
→ 1764年創業
→ 宝一
→ 神開
→ 近江米
→ 和醸良酒
→ 山廃・生酛・水酛
→ 甘酸・発泡・高麹
という流れを持つ。
重要なのは、
歴史が長いのに、酒が保守的ではないこと。
昔の水酛も造る。
生酛も造る。
激辛も造る。
甘酸も造る。
低アル発泡も造る。
麹を60%使う酒まで造る。
その振幅すべてを、
「神開」
という一つの銘柄に収めている。
つまり藤本酒造は、
“神話的な由来を持つ昔ながらの地酒蔵”
ではない。
“近江の米と神開の水を使い、発酵の可能性そのものを開き続ける蔵”
と捉えるのが最も適切である。
■ コピー
メイン
「神が開いた水を、次の一杯へ。『神開』。」
サブ
滋賀・甲賀。
神託によって掘り当てたと伝わる井戸水と、近江の米。
1764年から、その恵みを「神開」へ醸してきた。
山廃、生酛、水酛。
甘酸、発泡、激辛、高麹。
古い技を守りながら、発酵の新しい扉を開く。
■ 結論
甲賀・水口で1764年から続く藤本酒造。
神託の井戸水と滋賀の山田錦・吟吹雪・玉栄・日本晴を基礎に、「神開」は伝統酒から水酛、低アル、甘酸、発泡まで姿を変える。
神が開いた水から、今も新しい酒の扉を開き続ける――それが藤本酒造である。
藤本酒造のテロワールを味わう👇
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神託の井戸水と近江米で「神開」を醸す、1764年創業の甲賀の酒蔵。 |

