馬場酒造場(酒蔵企業分析)
鹿島の米と水で、食卓に寄り添う「能古見」を醸す
所在地:佐賀県鹿島市大字三河内乙1365
代表銘柄:能古見〈のごみ〉
情報確認日:2026年10月10日
公式サイト、鹿島市・佐賀県の公開資料、鹿島商工会議所の会報などを基に構成。企業評価は公開情報からの分析であり、売上高・利益など確認できない数値は記載していない。
① 一行定義
馬場酒造場は、鹿島の米と多良岳山系の水を使い、食事に寄り添う「能古見」を少量生産する酒蔵である。
② 企業結論・ブランド要約
馬場酒造場の企業価値は、地元農家との関係、地域の食文化、少量生産を一つの銘柄に結び付けていることにある。
「能古見」は、やや甘口を基本としながら、米の旨味ときれいな後味を目指す日本酒。日々の食事とともに飲まれることを重視している。
分析上は、地域原料の確保から飲用場面まで、一貫した考え方を持つ酒蔵である。
③ 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法人名 | 有限会社馬場酒造場 |
| 創業 | 1795年〈寛政7年〉 |
| 会社設立 | 1954年〈昭和29年〉 |
| 所在地 | 佐賀県鹿島市大字三河内乙1365 |
| 代表者 | 9代目・馬場嵩一朗。2025年10月の鹿島商工会議所会報で代表取締役就任を確認 |
| 資本金 | 1,000万円〈公式掲載値〉 |
| 主な銘柄 | 能古見、芳薫 |
| 電話 | 0954-63-3888 |
| 公式サイト | https://www.nogomi.co.jp/ |
公式会社情報には8代目・馬場第一郎の表記が残る。代表者は、より新しい就任資料を採用した。
④ 歴史・企業形成
1795年、初代・馬場夘左衛門が創業。能古見地区の中川沿いで酒造りを続けてきた。
8代目は、経営環境の変化に対応するため、地元で栽培する山田錦を使った特定名称酒へ転換。JA・農家との交渉を重ね、「能古見」を育てた。
企業形成の転機は、地域原料と品質を軸に、日常で飲まれる地酒へ進路を定めたことにある。
⑤ ブランド構造
| 銘柄・商品群 | 位置付け |
|---|---|
| 能古見 | 地域名を冠する中心ブランド |
| 能古見 純米吟醸 | ブランドを代表する定番商品 |
| 大吟醸・純米大吟醸 | 吟醸技術と贈答需要を担う |
| あらばしり・中取り生など | 新酒・生酒の楽しみを提供 |
| 能古見〜ごえん〜 | 地域農業と環境保全を結ぶ商品 |
| 芳薫 | 酒造組合が掲載する製造銘柄 |
分析上、中心ブランドを「能古見」に置き、その中で用途や季節を広げる構造である。
⑥ 水・風土・地域テロワール
蔵は、山々と里山風景に囲まれた鹿島市の能古見地区に位置する。仕込水には、多良岳山系の伏流水を使用し、公式は水質を「弱軟水」と説明する。
地域性は、水、地元の米、農家との関係、佐賀の料理に合わせる酒質によって成立している。
分析上、原料産地と飲まれる土地の食文化が結び付いた、地域密着性の高いブランドである。
⑦ 独自技術・酒造技術
公式の製造紹介では、浸漬時間を秒単位で調整し、醪の品温を0.1℃単位で管理すると説明している。米の状態や気候に応じて、微生物の働く環境を整える酒造りである。
酒造組合の紹介には、低温で長い時間をかけて発酵させる方針が記載されている。
独自性は、特許技術の確認よりも、地域原料に合わせた工程管理と少量生産に見いだせる。
⑧ 原料・酒米戦略
公式の酒造工程紹介では、原料米の90%以上を佐賀県産とし、吟醸酒以上の多くに山田錦、純米酒に佐賀の華を使用すると説明している。
地元契約農家との交流と、農薬使用を抑えた栽培を掲げる。契約農家数・面積・収穫量は公開情報では確認できない。
「ごえん」では飯米のさがびよりを使用。酒米だけに限定せず、地域の農業を酒造りへつなげている。
⑨ 商品・商品戦略
| 商品 | 公開されている特徴 | 分析上の役割 |
|---|---|---|
| 能古見 純米吟醸 | 山田錦、精米歩合50% | 定番・ブランドの入口 |
| 能古見 純米吟醸辛口 | 山田錦、精米歩合50% | 辛口嗜好への対応 |
| 能古見 特別純米 | 佐賀の華、精米歩合58% | 日常の食中酒 |
| 能古見 純米大吟醸 | 山田錦、精米歩合40% | 贈答・上位商品 |
| 能古見 大吟醸 | 山田錦、精米歩合35% | 吟醸技術の表現 |
| あらばしり・中取り生 | 生酒の展開 | 季節需要 |
| 能古見〜ごえん〜 | さがびよりを使う純米酒 | 地域・環境との接点 |
数値は公式掲載仕様であり、販売中の商品・年度ごとの表示を優先する。定番を中心に、辛口、上位酒、生酒へ選択肢を広げる構成である。
⑩ 味わい・酒質設計
企業として目指すのは、香りと米の旨味があり、食事とともに飲み続けられる酒である。やや甘口を基本としながら、香りを過度に強くせず、きれいな味わいを重視する。
商品別には辛口もあり、蔵全体を一律に甘口とは捉えられない。
公式商品紹介は、純米吟醸や特別純米について、冷酒に加え常温・ぬる燗も案内する。温度帯を変えて食事に合わせられる幅がある。
⑪ 受賞・品質評価
| 審査・コンテスト | 公式掲載の実績 |
|---|---|
| 全国新酒鑑評会 | 2000年・2001年・2003年金賞、2006年・2015年入賞 |
| 福岡国税局主催酒類鑑評会 | 2002年・2003年金賞、2015年大賞など |
| 特選街主催全国日本酒コンテスト | 2000年・2001年グランプリ |
国内審査での品質評価と、ブランド認知を広げた実績が確認できる。
表は確認できた受賞歴であり、最新までの全件を保証するものではない。海外受賞は他銘柄と併記された資料があるため、対象を特定できない実績は採用していない。
⑫ 地域ブランド
「能古見」は、かつての能古見村に由来する名称。地域名と地元原料を結び付けた銘柄である。
「能古見〜ごえん〜」は、田んぼを残し、農家の存続や有明海干潟の環境保全につなげる取り組みとして紹介される。公式資料は、売上金の一部を環境保全活動資金へ寄付すると説明する。
分析上、地域性を商品名だけでなく、農業の継続へ広げている点に特徴がある。
⑬ 人・組織・継承
2025年10月の鹿島商工会議所会報では、9代目・馬場嵩一朗の代表取締役就任と、大学院での研究歴が紹介されている。
2026年の応援購入企画でも、9代目当主兼杜氏として登場する。
分析上、8代目が築いた農家・酒販店との関係に、次世代の研究経験を組み合わせる段階にある。従業員数や技術継承制度の詳細は未確認。
⑭ 観光・酒蔵ツーリズム
通常営業では、直売がある一方、佐賀県観光サイトは試飲不可、酒造組合は蔵見学なしと掲載している。常設の自由見学施設としては扱えない。
一方、鹿島酒蔵ツーリズムの2026年資料には、見学・試飲などの催しが掲載されている。また、酵母培養や香りの体験を組み合わせた限定企画も確認できる。
観光価値は、里山と酒造りを知ることにある。体験の実施条件は企画ごとに異なる。
⑮ 流通・販売
公式サイトは、北海道・東北、関東、東海、関西、四国、九州などの取扱店を掲載している。地域の酒販店を通じて、県外にも販売接点を持つ。
蔵では直売を行う。公式購入ページにはネット販売一時停止の表示が残るため、現行の通販受付を確定情報として扱わない。
公式は酒販店にも温度管理を求めており、出荷後の品質維持を重視している。
⑯ 事業構造
公開情報から確認できる中心事業は、清酒の製造・販売である。公式サイトは「370石の小さな蔵元」と紹介するが、この数値の基準年度は明示されていない。
分析上は、少量生産の定番酒を軸に、上位商品と季節商品を組み合わせる構造と捉えられる。
売上高、利益、商品別構成比、卸売・直販比率は未確認。生産規模の紹介だけで収益性は判断できない。
⑰ 競合比較
以下は、市場シェアの順位ではなく事業モデルの比較である。
| 比較対象 | 馬場酒造場の特徴 |
|---|---|
| 大量生産型の酒類メーカー | 品質を管理できる量に生産を絞る |
| 高級贈答酒中心の酒蔵 | 良質な酒を日常の食事で飲む思想 |
| 香りの強さを重視する銘柄 | 食事との調和を重視する酒質 |
| 観光施設型の酒蔵 | 直売と限定企画を中心とする体験 |
| 原料を広域調達する酒蔵 | 地元農家との関係と県産米を重視 |
分析上の競争力は、地域の米を、日常で飲まれる品質へ仕上げることにある。
⑱ 経営課題・成長余地
⑲ SWOT分析
| 区分 | 公開情報からの分析 |
|---|---|
| 強み | 長い歴史、地元農家との連携、食中酒の明確な思想、少量生産、生酒の展開 |
| 弱み・制約 | 生産量を急に拡大しにくい。公式サイトに旧情報・販売停止表示が残る |
| 機会 | 地域原料への関心、飲食店での継続採用、環境保全商品の理解、限定体験 |
| 脅威 | 原料調達の変動、農業の担い手減少、他銘柄との競争、価格改定後の需要変化 |
生産量の拡大と同時に、品質、継続購入、地域の原料供給を保つことが重要となる。
⑳ PEST分析
| 視点 | 企業への影響を考える要素 |
|---|---|
| P:制度 | 酒類製造・販売・表示に関する制度対応、地域保全活動との関係 |
| E:経済 | 価格改定、仕入れ・製造・保管・配送費と販売価格の関係 |
| S:社会 | 食事と地酒を楽しむ需要、地域農業や環境への関心 |
| T:技術 | 米の吸水・発酵管理、微生物研究経験、流通時の温度管理 |
価格改定と製造管理は公開情報で確認できる。その他は事業構造から整理した外部環境の論点である。
㉑ 4P分析
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| Product:商品 | 能古見の定番、上位酒、生酒、地域保全に関わる「ごえん」 |
| Price:価格 | 日常の食中酒から贈答向けまで。2026年の改定告知があり、旧掲載価格は現行価格として扱わない |
| Place:販売場所 | 各地の取扱店、蔵の直売、限定販売企画 |
| Promotion:接点形成 | 地元米と水、食事との相性、造り手、酒蔵ツーリズム、環境保全の物語 |
分析上、地域と酒質の説明が、価格への納得と継続購入を支える構成である。
㉒ ターゲット
商品と酒造方針から、次の顧客層が想定される。
- 米の旨味と穏やかな甘味を好む人:純米吟醸など。
- 食事とともに地酒を楽しむ人:定番の純米系商品。
- 生酒・新酒を楽しむ人:あらばしり、中取り生など。
- 産地や農家との関係を重視する人:地元米を使う商品。
- 地域保全に関心を持つ人:「能古見〜ごえん〜」。
実際の購入者構成を示す調査ではなく、公開された商品特性からの分析である。
㉓ ブランドコピー・見せ方
鹿島の米、多良岳の水。食卓でつながる、能古見の一杯。
馬場酒造場の魅力は、田んぼ、造り手、料理、人の時間が一つにつながることにある。
派手さよりも、食事とともにまた飲みたくなる味わい。その継続性が、地域に根差す「能古見」の価値を表している。
上記コピーは本稿の表現であり、公式標語ではない。
㉔ この酒蔵をどう見せるべきか・最終評価
㉕ 最終評価
◎=特に明確な強み/○=実績・特徴を確認/△=評価範囲が限定的/―=公開情報不足。
未確認は、取り組みが存在しないことを意味しない。
| 評価軸 | 評価 | 根拠・評価範囲 |
|---|---|---|
| 歴史性 | ◎ | 1795年創業、世代を重ねる酒造り |
| 地域性 | ◎ | 能古見の名称、地域原料、食文化 |
| 山田錦力 | ○ | 地元栽培を進め、吟醸系に使用 |
| 原料品質 | ○ | 契約農家との交流と栽培方針 |
| 契約農家力 | ○ | 契約関係を確認。規模は未確認 |
| 土壌研究力 | ― | 土壌分析・研究成果は未確認 |
| テロワール力 | ◎ | 米・水・農家・食文化の結び付き |
| 酒米復活力 | ― | 復活栽培の実績は未確認 |
| 酒米開発力 | ― | 自社育種の実績は未確認 |
| 吟醸技術力 | ○ | 工程管理、吟醸商品、国内受賞 |
| 国際評価力 | ― | 対象を特定できる受賞資料が不足 |
| プレミアム力 | ○ | 大吟醸・純米大吟醸を展開 |
| 生酒力 | ○ | あらばしり・中取り生などを確認 |
| 熟成酒力 | ― | 長期熟成商品の体系は未確認 |
| 商品開発力 | ○ | 季節商品、「ごえん」、限定企画 |
| 食中酒力 | ◎ | 食事を中心に置く明確な酒質思想 |
| 直販力 | △ | 蔵直売あり。現行通販受付は未確定 |
| 観光体験力 | △ | 催事・限定体験あり。通常見学は別扱い |
| 海外適性 | △ | 食中酒として可能性。輸出実績は未確認 |
| ブランド独自性 | ◎ | 地域農業と日常の食卓を結ぶ |
| 成長可能性 | ○ | 継承・地域価値・再購入に余地 |
総合すると、地域性、食中酒の思想、農家との関係を強みとする酒蔵と評価できる。
㉖ 最終結論
馬場酒造場の本質は、地元で育った米を、地元の料理とともに楽しめる酒へ変えることにある。
「能古見」は、歴史を受け継ぎながら、地域原料と少量生産によって育てられたブランドである。「ごえん」は、その考え方を農業と環境の継続へ広げている。
企業としての成長を判断するには財務情報が必要だが、公開情報からは、地域に根差す理由と、飲み続けてもらうための酒質思想が明確に確認できる。
馬場酒造場のテロワールを味わう👇
| イメージ | 酒蔵 | 説明 | リンク |
|
1
![]() |
馬場酒造場 |
佐賀の米と多良岳の水で、やさしい甘旨さと食事に寄り添う「能古見」を醸す小蔵。 |

