元坂酒造(酒蔵ガイド)
― 大台ヶ原を源流とする宮川水系の伏流水に恵まれた大台町・柳原で、1805年から酒を醸す老舗酒蔵。「酒屋八兵衛」を中心に、自社田の伊勢錦、三重県産米、山廃、純米酒、季節酒を通して、“グラス一杯の驚きよりも、一晩の安らぎ”を追求。米作りから酒造りまで地域の自然と向き合い、食事とともに長く飲める日常酒を磨く、南三重を代表する農醸一体型の酒蔵。

① 一行定義
宮川の伏流水と伊勢錦で「酒屋八兵衛」を醸す、1805年創業の大台町の酒蔵。
② ブランド要約
所在地: 三重県多気郡大台町柳原346−2
会社名: 元坂酒造株式会社
創業: 文化2年・1805年
代表者: 元坂 新・六代目
代表銘柄: 酒屋八兵衛
地域銘柄: 五十鈴川
生産量: 約900石
酒造人数: 社長・専務・通年雇用社員3名の計5名
社員数: 約10名
主な流通: 三重県内約60%・県外約40%
事業: 清酒・リキュール製造販売
仕込水: 大台ヶ原・日出ヶ岳を源流とする宮川水系の伏流水
水質: 軟水
主な酒米: 伊勢錦・山田錦・五百万石・雄町ほか
自社田: 柳原地区に約4ha
有機栽培転換: 2020年から一部約3.1ha
酒造思想: 「グラス一杯の驚きよりも、一晩の安らぎ」
店頭販売: あり
蔵見学: 一般見学は原則不可/要連絡
オンライン販売: あり
元坂酒造は1805年、初代・元坂八兵衛によって現在地で創業した。
以来、六代にわたり家族で酒造りを受け継ぎ、現在の主力は創業者の名を冠した、
「酒屋八兵衛」。
その酒造りの中心にあるのは、
米を育てること。
水を知ること。
食事に寄り添うこと。
元坂酒造では、柳原地区の自社田で酒米を栽培し、とりわけ三重の在来品種**「伊勢錦」**の復活と栽培に長く取り組んできた。
👉 “酒蔵で米を選ぶのではなく、田んぼから酒を考える蔵。”
③ 味ポジション
香り :★★☆☆☆〜★★★★☆
甘味 :★★★☆☆〜★★★★☆
旨味 :★★★★☆〜★★★★★
透明感 :★★★★☆
酸 :★★★☆☆〜★★★★☆
キレ :★★★★☆
コク :★★★★☆
👉 “華やかさより米の旨味。丸く広がり、最後は静かに切れる『穏やか・食中型』。”
元坂酒造が目指すのは、
「グラス一杯の驚きよりも、一晩の安らぎ」。
そのため酒質は、
穏やかな香り
+米由来の自然な甘味
+ふくらみのある旨味
+突出しすぎない酸
+飲み疲れしないキレ
が基本となる。
特に宮川水系の軟水は、
丸み
+柔らかさ
+穏やかさ
を酒質へ与える。
「酒屋八兵衛 純米酒」は、ふっくらした米の旨味と、すっと消えるキレを持ち、燗にするとさらに丸みが増すと紹介されている。
👉 “一口で驚かせる酒ではなく、料理とともに一晩飲み続けられる酒。”
④ 強み
① 1805年創業、220年を超える酒造史
② 六代続く家族経営
③ 大台ヶ原を源流とする宮川水系伏流水
④ 軟水を生かす丸く穏やかな酒質
⑤ 柳原地区に約4haの自社田
⑥ 酒米生産から酒造りまで自社で関与
⑦ 三重の在来酒米「伊勢錦」の復活・栽培
⑧ 一部圃場を無農薬有機栽培へ転換
⑨ 伊勢錦を自社田で継続栽培
⑩ 山廃造りへの継続的な取り組み
⑪ 純米酒を中心とした食中酒設計
⑫ 山田錦・五百万石・雄町など多様な酒米を使用
⑬ 香りよりバランスを重視する一貫した思想
⑭ 温度帯を広く楽しめる酒質
⑮ 燗で旨味が増す設計
⑯ 約900石の中小規模生産
⑰ 酒造り5名の少数精鋭体制
⑱ 三重県内流通約60%の強い地元基盤
⑲ 県外地酒専門店への約40%流通
⑳ KAYA・Talkin'Loudなど新商品開発
㉑ 低アルコール・酸主体の現代型商品も展開
㉒ 米・水・土壌まで地域性を酒へ落とすテロワール型
㉓ 清酒だけでなくリキュールも製造
㉔ “驚き”より“安らぎ”という明確なブランド思想
👉 “最大の強みは、酒米を買うだけでなく、田んぼから酒の味をつくっていること。”
とりわけ重要なのが、
伊勢錦。
戦後に姿を消した古い酒米を、自らの地域で育て直し、酒へ戻す。
酒米の復活は、単なる限定商品の開発ではない。
土地の記憶を、田んぼから酒へ戻す仕事
といえる。
⑤ 向いている人
・三重・大台町の地酒を飲みたい人
・米の旨味を重視する人
・華やかすぎない日本酒が好きな人
・食中酒を重視する人
・燗酒が好きな人
・伊勢錦に興味がある人
・酒米の歴史を知りたい人
・自社田・農業と酒造りの関係に興味がある人
・山廃の旨味が好きな人
・穏やかな酸を好む人
・山田錦や雄町も飲み比べたい人
・地域循環型の酒蔵を評価する人
・毎日飲める質の高い純米酒を探している人
👉 “派手な一杯より、料理とともに静かに飲み続けたい人向け。”
選び方は、
酒屋八兵衛 純米酒
→ 基準・米旨・食中
山廃純米酒
→ 酸・コク・燗
伊勢錦
→ 地域・在来米・余韻
山田錦
→ バランス・王道
雄町
→ 厚み・旨味
KAYA
→ 夏・熟成・やわらか
Talkin'Loud
→ 低アル・酸・モダン
と整理すると分かりやすい。
⑥ 向かない人
・極端に華やかな吟醸香だけを求める人
・超高酸モダン酒だけを追う人
・超低アルコール酒だけを飲みたい人
・全国どこでも大量流通する酒を求める人
・完全なプレミアム高級酒路線を重視する人
・観光施設型の酒蔵を期待する人
・一杯目のインパクトだけで酒を判断する人
👉 “強烈な個性ではなく、米・料理・温度の変化をゆっくり楽しむ人向け。”
元坂酒造は、
華やかな香りで驚かせる蔵
ではない。
酒そのものが前へ出るより、
料理。
会話。
夜の時間。
その中へ酒が溶け込むことを大切にしている。
⑦ 商品カテゴリ
■ 酒屋八兵衛 純米酒
元坂酒造の基準となる一本。
特徴は、
ふっくらした米の旨味
+穏やかな香り
+すっと消えるキレ。
燗にすると丸みが増し、より食中酒としての良さが出る。
👉 “元坂酒造を最初に飲むなら、まずこの一本。”
■ 酒屋八兵衛 山廃純米酒
元坂酒造が継続して取り組む山廃系。
18BY頃から山廃造りに挑戦し、より深い酒質と新しい個性を追求してきた。
特徴は、
酸
+旨味
+コク
+燗適性。
👉 “穏やかな八兵衛に、山廃の奥行きを加えた一本。”
■ 酒屋八兵衛 伊勢錦 純米吟醸
自社田で育てる三重の在来品種「伊勢錦」を使用。
舌先には、
穏やかな甘味
+コク
が感じられ、そのまま中心を真っ直ぐ流れ、深い余韻へ続く。
👉 “元坂酒造の地域性を最も濃く表す酒。”
■ 酒屋八兵衛 伊勢錦系限定酒
「帰農」「KINO」など、伊勢錦を軸にした限定醸造を展開。
精米歩合や仕込み条件を変えながら、
在来米の個性そのもの
を探るシリーズとなっている。
👉 “酒米復活を商品で終わらせず、継続的に検証するシリーズ。”
■ 酒屋八兵衛 山田錦
山田錦を使う純米系商品。
八兵衛らしい、
丸み
+旨味
+バランス
を王道酒米で表現する。
生原酒など季節商品でも展開される。
👉 “酒米の王道で、八兵衛の設計思想を確認する一本。”
■ 酒屋八兵衛 雄町
雄町を使う限定酒。
雄町らしい、
厚み
+ふくらみ
+旨味
を、元坂酒造らしく穏やかにまとめる。
👉 “八兵衛の中で、より旨味側を楽しむ一本。”
■ 酒屋八兵衛 KAYA
夏向けの季節商品。
初冬に仕込んだ酒を6月まで貯蔵し、
落ち着いた旨味
+丸み
+9号酵母由来の酸
+青リンゴを思わせる香り
へ仕上げる。
夏野菜のお浸し、炊き合わせ、赤身魚との相性も提案されている。
👉 “夏でも落ち着いて飲める、八兵衛の季節酒。”
■ Talkin'Loud
元坂酒造の現代型商品。
テーマは、
「Talkin' Loud!」
アルコール度数は14%。
特徴は、
リンゴのようなジューシーな酸
+軽快さ
+カジュアルさ。
BBQやアウトドア、音楽と一緒に楽しむ酒として設計されている。
👉 “『一晩の安らぎ』を守りながら、若い飲用シーンへ開く一本。”
■ 酒屋八兵衛 十五夜
季節限定の純米酒。
山田錦・五百万石などを使い、秋の夜に楽しむ酒として展開されている。
👉 “季節と食卓をつなぐ、秋の酒屋八兵衛。”
■ 酒屋八兵衛 八十八夜
季節の節目を表す純米酒。
春から初夏の食卓へ、
軽やかさ
+米旨
+季節感
を加える。
👉 “農の暦を、そのまま酒の名前へ。”
■ 五十鈴川
元坂酒造の地域銘柄。
「酒屋八兵衛」と並び、三重県内で地域流通を支える地酒として位置づけられる。
👉 “プレミアムではなく、地元の日常を支える銘柄。”
⑧ 飲み方
冷酒 :◎
常温 :◎◎
ぬる燗 :◎◎
熱燗 :◎
ワイングラス :○〜◎
生原酒 :◎
山廃 :◎◎
食中酒 :◎◎
👉 純米酒・伊勢錦は常温〜ぬる燗、山廃は燗、季節生酒は冷酒。Talkin'Loudはしっかり冷やして軽快に楽しむ。
■ 料理との合わせ方
純米酒
→ 煮物、焼魚、豆腐、鶏料理
山廃純米
→ 味噌料理、煮込み、焼鳥、茸
伊勢錦
→ 山菜、川魚、発酵食品、和食
山田錦
→ 刺身、焼魚、天ぷら
雄町
→ 肉料理、煮魚、濃い旨味の料理
KAYA
→ 夏野菜、赤身魚、炊き合わせ
Talkin'Loud
→ BBQ、揚げ物、軽い肉料理
大台町・奥伊勢なら、
鮎
川魚
伊勢芋
山菜
茸
鹿肉
猪肉
松阪牛
味噌料理
との組み合わせが分かりやすい。
👉 “宮川の水で醸した酒を、奥伊勢の里山の食で飲む。”
⑨ 位置づけ
クラシック ← ◎ → ○ モダン
穏やか ← ◎ → ○ 華やか
淡麗 ← ◎ → ○ 濃醇
辛口 ← ◎ → ○ 甘旨口
軽快 ← ◎ → ◎ 米旨
日常酒 ← ◎ → ○ 最高級酒
若酒 ← ◎ → ○ 熟成
農業 ← ◎ → ◎ 醸造
地域密着 ← ◎ → ○ 全国流通
👉 “自社田・伊勢錦・宮川の伏流水を核に、料理へ寄り添う『奥伊勢・農醸一体型』酒蔵。”
三重県内で比較すると、
宮﨑本店・宮の雪/キンミヤ
=「四日市・総合酒類・全国ブランド」
清水清三郎商店・作
=「鈴鹿・透明感・モダン吟醸」
大田酒造・半蔵
=「伊賀・寒造り・伝統×革新」
瀧自慢酒造・瀧自慢
=「名張・清流・小規模・食中」
木屋正酒造・而今
=「名張・酒米表現・品質最優先」
福和蔵
=「多気・四季醸造・食体験」
河武醸造・鉾杉
=「多気・常若・伝統革新」
元坂酒造・酒屋八兵衛
=「大台・自社田・伊勢錦・宮川伏流水・山廃・食中・農醸一体」
と整理できる。
元坂酒造のブランド構造は、
大台ヶ原
→ 宮川
→ 柳原
→ 1805年創業
→ 自社田
→ 伊勢錦
→ 酒屋八兵衛
→ 山廃
→ 日常食中酒
→ 次世代商品
という流れを持つ。
重要なのは、
米を「原料」としてだけ見ていないこと。
田んぼを耕す。
伊勢錦を育てる。
土を見る。
水を見る。
そして、酒を醸す。
酒造りだけを切り取らず、
農業から一杯までを一つの仕事として捉える。
そこが元坂酒造の本質である。
つまり元坂酒造は、
“伊勢錦を使う古い酒蔵”
ではない。
“奥伊勢の田んぼと水を、毎晩飲みたくなる酒へ変える蔵”
と捉えるのが最も適切である。
■ コピー
メイン
「一杯の驚きより、一晩の安らぎを。『酒屋八兵衛』。」
サブ
三重・大台、柳原。
大台ヶ原から流れる水。
その水に育てられた田んぼ。
そこに、伊勢錦が実る。
1805年から、元坂酒造は米を見て、水を見て、酒を醸してきた。
目指すのは、派手な一杯ではない。
料理の隣で、静かに旨い。
飲み進めても疲れない。
燗にすれば、さらに丸くなる。
田んぼから、一晩の安らぎへ。
それが「酒屋八兵衛」である。
■ 結論
大台ヶ原を源とする宮川の伏流水と、自社田で育てる伊勢錦。
元坂酒造は1805年から、米作りと酒造りを一つにつなぎ、料理に寄り添う「酒屋八兵衛」を醸してきた。
グラス一杯の驚きより、一晩飲み続けられる安らぎを――それが元坂酒造である。
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宮川の伏流水と伊勢錦で「酒屋八兵衛」を醸す、1805年創業の大台町の酒蔵。 |

