壽酒造(酒蔵ガイド)

― 大阪・高槻の旧酒どころ「摂津富田郷」で1822年から「國乃長」を醸す老舗酒蔵。阿武山山系の伏流水と米の旨味を軸に、華やかな大吟醸から燗に強い純米酒、甘口、生原酒まで展開する。1995年には大阪で最初期のクラフトビール醸造へ進出し、2006年には酒粕を再発酵・減圧蒸留する地焼酎も開始。「料理を引き立たせ、華を添える」を掲げ、日本酒・ビール・焼酎を横断する“富田・食中酒革新型”の酒蔵である。


① 一行定義

阿武山の伏流水と米旨を「國乃長」へ醸す、1822年創醸の酒蔵。


② ブランド要約

所在地: 大阪府高槻市富田町三丁目26-12
会社名: 壽酒造株式会社
創醸: 文政5年・1822年
代表取締役社長: 橋本 憲治・7代目蔵元
代表銘柄: 國乃長
地域ブランド: とんださけ
地域: 高槻市富田・旧摂津富田郷
仕込水: 阿武山山系の伏流水
水の特徴: ミネラル分を含む酒造適性の高い井戸水
酒造思想: 「料理を引き立たせ、華を添える」食中酒
主力酒質: 大吟醸・純米吟醸・特別純米・純米・本醸造・生原酒・甘口純米
クラフトビール: 1995年醸造開始
焼酎: 2006年製造開始
その他: リキュール・酒粕・食品
蔵売店: 月〜金 10:00〜17:00
クラノミ: 月〜土 12:30〜17:00(LO16:30)
アクセス: 阪急富田駅徒歩約5分/JR摂津富田駅徒歩約7分
酒蔵見学: 実施日は要確認

富田は、江戸時代初期には大阪を代表する酒どころの一つだった。

最盛期には24軒もの造り酒屋があり、伊丹・池田とともに北摂三銘酒に数えられたとされる。現在、富田で酒造りを続けているのは壽酒造と清鶴酒造の2蔵である。

壽酒造が酒造業へ入った1822年には、すでに灘・伏見の台頭によって富田の酒造業は衰退していた。

それでも、

「醸の国」と呼ばれた富田の酒文化を絶やさない。

その思いから酒造りを始めたことが、現在の壽酒造につながる。

「國乃長」という名も、

“醸の国の長であれ”

という決意に由来する。

👉 “失われかけた富田の酒文化を、二百年先までつないできた蔵。”


③ 味ポジション

香り  :★★★☆☆〜★★★★★
甘味  :★★☆☆☆〜★★★★★
旨味  :★★★★☆〜★★★★★
透明感 :★★★☆☆〜★★★★★
酸   :★★★☆☆〜★★★★☆
キレ  :★★★★☆〜★★★★★
コク  :★★★★☆〜★★★★★

👉 “米の旨味を芯に、華やか・辛口・甘口まで食卓へ合わせる『北摂・米旨食中型』。”

國乃長の酒質に共通するのは、

米の旨味を消しすぎないこと。

公式は、

飲み飽きしない
+程よいキレ
+一本芯の通った米の旨味

を日本酒の基本としている。

たとえば、

純米吟醸
=華やかな吟醸香+米旨+やや柔らかな甘味

純米酒
=辛口+深い米旨+燗で広がるコク

芳醇酒
=日本酒度-8前後の甘口+すっきりした後口

とんださけ
=香りを抑えた米旨+食中性

あやめさけ
=山田錦35%精米+華やかな吟醸香+上品な旨味

と、方向性は大きく異なる。

👉 “一つの味へ統一するのではなく、料理に応じて酒質を使い分ける。”


④ 強み

① 1822年創醸、200年以上の酒造史
② 江戸期の名醸地・摂津富田郷の酒文化を継承
③ 現在も富田で酒を造る数少ない酒蔵
④ 阿武山山系の伏流水を蔵内井戸から使用
⑤ 「料理を引き立たせ、華を添える」という明確な食中酒思想
⑥ 大吟醸から甘口純米まで幅広い酒質
⑦ 山田錦35%精米「あやめさけ」を展開
⑧ 雫取り大吟醸「蒼雫」まで手掛ける吟醸技術
⑨ 燗にも強い「とんださけ特別純米」
⑩ 杜氏が出来の良いタンクを選ぶ「カエルラベル」
⑪ 日本酒度-20級の濃醇甘口新酒「貴一本」
⑫ 1995年、大阪で先駆けてクラフトビール醸造を開始
⑬ 清酒酵母と純米酒を応用した「貴醸エール」
⑭ ビールでも一貫して食中性を重視
⑮ 2006年から酒粕を活用した粕醪取り焼酎を製造
⑯ 清酒・ビール・焼酎・リキュールを一蔵で醸造
⑰ 2025年 全国新酒鑑評会 金賞
⑱ 2026年 全国新酒鑑評会 金賞
⑲ 2025年度 大阪国税局清酒鑑評会 吟醸酒部門優秀賞
⑳ 蔵ケルシュがGreat Beer Awards 2021金賞
㉑ 貴醸GOLDがアジア・ビアカップ金賞実績
㉒ 蔵売店+立ち飲み「クラノミ」による直接体験
㉓ 地元高槻のイベントへ積極的に参加
㉔ 先祖代々の家訓「新しいもの好きであれ」を商品開発へ反映

👉 “最大の強みは、二百年の伝統を守りながら、新しい酒種へ踏み出すことを伝統そのものにしていること。”

2023〜24年には酒蔵・麹室・貯蔵タンク・生産ラインなどの大規模改装も進められ、新体制となった後、2025年に全国新酒鑑評会金賞を獲得。さらに2026年も令和7酒造年度で金賞となり、新しい製造環境でも吟醸技術の高さを示している。


⑤ 向いている人

・大阪・北摂の地酒を飲みたい人
・高槻・富田の酒文化に興味がある人
・米の旨味がある日本酒を好む人
・食中酒を重視する人
・純米酒を燗でも楽しみたい人
・華やかな大吟醸も飲みたい人
・辛口と甘口を同じ蔵で比較したい人
・生原酒や季節酒が好きな人
・クラフトビールも楽しみたい人
・日本酒技術を応用したビールに興味がある人
・焼酎まで含めて酒造技術を見たい人
・蔵元で少量ずつ飲み比べたい人

👉 “日本酒一種類ではなく、料理とともに酒の幅を楽しみたい人向け。”

選び方は、

あやめさけ 蒼雫
→ 雫取り・山田錦35%・最高峰

あやめさけ 蒼庵
→ 山田錦35%・大吟醸・華やか

國乃長 純米吟醸
→ 香り・米旨・王道

とんださけ 特別純米
→ 富田・米旨・食中・燗

國乃長 純米酒
→ 辛口・晩酌・燗

芳醇酒
→ 甘口・濃醇

カエルラベル
→ 生原酒・限定・年度差

貴一本
→ 超濃醇甘口・新酒

と整理すると分かりやすい。


⑥ 向かない人

・超淡麗だけを求める人
・単一酒米・単一田のテロワールだけを追う人
・華やかな吟醸酒だけを評価する人
・日本酒以外を造らない専業蔵を好む人
・全国大量流通の均一な商品だけを求める人
・食事と合わせず酒単体の強い個性だけを求める人

👉 “一点突出より、料理・温度・酒種による多様性を楽しむ人向け。”

壽酒造は、

日本酒
+クラフトビール
+焼酎
+リキュール

まで造る。

それは日本酒への集中が弱いのではなく、

多様な酒を楽しんでもらうことが、日本酒文化を守ることにもつながる

という蔵元の考えに基づく。


⑦ 商品カテゴリ

■ あやめさけ 蒼雫

國乃長の最高峰クラス。

原料米:兵庫県産山田錦
精米歩合:35%
アルコール:16%
日本酒度:±0前後

酒袋で搾り、自然に滴る雫を集める高級大吟醸。

特徴は、

華やかな吟醸香
+山田錦の上品な旨味
+繊細さ。

👉 “壽酒造の吟醸技術を、最も繊細に取り出した一本。”


■ あやめさけ 蒼庵

原料米:兵庫県産山田錦
精米歩合:35%
アルコール:16%

蒼雫と同じ高精白山田錦を使い、

華やかな吟醸香
+米の旨味
+上品なバランス

へ仕上げる。

2025年度大阪国税局清酒鑑評会の吟醸酒部門で優秀賞を獲得した大吟醸は、この蒼庵・蒼雫として商品化されている。

👉 “國乃長の鑑評会技術を、市販酒として味わう大吟醸。”


■ 國乃長 大吟醸

國乃長の定番大吟醸。

上位の「あやめさけ」より日常へ近い位置で、

吟醸香
+透明感
+軽快な飲み口

を担う。現在も清酒の主要ラインアップに位置づけられている。

👉 “特別な大吟醸を、國乃長の日常側へ近づける一本。”


■ 國乃長 純米吟醸

精米歩合:60%
アルコール:16%
日本酒度:-1前後
酵母:協会1801号

特徴は、

華やかな香り
+米の旨味
+柔らかな飲み口。

冷酒を中心に楽しみやすい。

👉 “香りと米旨を両立した、國乃長の基準純米吟醸。”


■ とんださけ 特別純米酒

富田酒の歴史をそのまま商品名へ残した、壽酒造を象徴する一本。

精米歩合:60%
アルコール:16%
日本酒度:+3前後
酵母:9号系

香りを抑え、

米の旨味
+食中性
+温度対応力

を重視。

冷酒・常温・ぬる燗・熱燗すべてに対応する。

👉 “江戸から続く富田酒の記憶を、現代の食中酒へ。”


■ とんださけ 特別純米 ヒヤオロシ

春に火入れし、夏を越して熟成。

二度目の火入れを行わず秋に出荷する季節酒。

精米歩合:60%
アルコール:17%
日本酒度:+3前後

もともと厚みのある特別純米に、

熟成による丸みと深み

が重なる。

👉 “富田酒を、ひと夏の時間でもう一段深くする秋酒。”


■ 國乃長 純米酒

精米歩合:70%
アルコール:15%
日本酒度:+3前後

特徴は、

しっかりした辛口
+米のコク
+燗上がり。

冷酒ではシャープ、燗では米旨が広がる。

👉 “毎日の晩酌で國乃長らしい米旨を知る一本。”


■ 國乃長 芳醇酒

珍しい甘口純米酒。

精米歩合:70%
アルコール:16%
日本酒度:-8前後

特徴は、

濃い甘味
+味わいの厚み
+すっきりした後口。

👉 “辛口だけではない、國乃長の甘旨側を担う純米酒。”


■ 國乃長 カエルラベル 純米吟醸生原酒

杜氏がその年の仕込みの中から、

出来の良いタンクを選び、生原酒で瓶詰めする限定シリーズ。

現行公式ページでは、

精米歩合60%
アルコール16%

を基本に、年度ごとに酒質が変わる。

つまり、

毎年同じ味を再現する商品ではない。

👉 “その年の國乃長を、そのまま飲む一本。”


■ しぼりたて生酒 貴一本

冬季限定の個性派新酒。

アルコール:17%
日本酒度:-20

糖類を添加せず、

米だけで強い甘味を出す独自設計。

特徴は、

濃醇甘口
+爽やか
+後切れ。

スパイシー料理や濃い肉料理にも合わせやすい。

👉 “日本酒度-20でも重く終わらせない、國乃長の発酵技術を示す酒。”


■ 國乃長 本醸造・特選・吟醸生貯蔵酒

國乃長は高級吟醸だけでなく、

本醸造
特選
吟醸生貯蔵酒

まで定番として展開する。

👉 “高級酒だけではなく、地元の日常酒まで守る商品構成。”


■ 國乃長 蔵ケルシュ

1995年から続くクラフトビールの代表。

ドイツ・ケルンのケルシュを参考に、

穏やかなハーブ香
+モルト感
+すっきりしたキレ

へ設計。

日本の食事との相性を重視する。

Great Beer Awards 2021で金賞。

👉 “日本酒蔵の食中酒思想を、そのままビールへ移した一本。”


■ 貴醸GOLD

壽酒造を最も象徴するクラフトビールの一つ。

麦汁を清酒酵母で発酵
+発酵途中に純米酒を添加

する独自製法。

日本酒の「貴醸酒」から着想し、

甘味
+フルーティーな香り
+ホップ香

を一体化する。

アジア・ビアカップ2011・2012年金賞などの実績を持つ。

👉 “日本酒とビールの境界から生まれた、國乃長ならではの酒。”


■ 國乃長 地焼酎

吟醸酒などの酒粕を水で戻し、

再発酵
→ 減圧蒸留

して造る粕醪取り焼酎。

酒粕の甘い米香と吟醸香を生かし、

クセが少なく、上品で華やか

に仕上げる。

👉 “日本酒を搾った後まで、酒造技術で価値へ変える。”


⑧ 飲み方

冷酒     :◎◎
常温     :◎◎
ぬる燗    :◎◎
熱燗     :◎◎
ワイングラス :◎◎
生原酒    :◎◎
甘口     :◎◎
クラフトビール:◎◎
食中酒    :◎◎

👉 あやめさけ・純米吟醸は冷酒〜ワイングラス。とんださけ・純米酒は冷酒から燗まで。芳醇酒・貴一本は少し冷やして、米由来の甘味を楽しみやすい。

■ 料理との合わせ方

あやめさけ 蒼庵・蒼雫
→ 白身魚、寿司、天ぷら、繊細な前菜

國乃長 純米吟醸
→ 刺身、焼魚、鶏料理

とんださけ
→ 煮物、焼鳥、天ぷら、鍋

國乃長 純米酒
→ おでん、焼魚、味噌料理、燗向き料理

芳醇酒
→ 甘辛い料理、チーズ、豚料理

貴一本
→ 鍋、肉料理、スパイス料理、おせち

蔵ケルシュ
→ 串揚げ、焼鳥、魚料理、軽い揚げ物

貴醸GOLD
→ チーズ、肉料理、濃い味の料理

大阪・北摂なら、

串揚げ
たこ焼き
お好み焼き
焼鳥
鯖料理
出汁巻き
豆腐料理
季節の惣菜

などと合わせやすい。

👉 “富田の酒を、大阪の日常の食卓で飲む。”


⑨ 位置づけ

クラシック ← ◎ → ◎ モダン
穏やか   ← ◎ → ◎ 華やか
淡麗    ← ◎ → ◎ 芳醇
辛口    ← ◎ → ◎ 甘口
日常酒   ← ◎ → ◎ 大吟醸
清酒    ← ◎ → ◎ ビール・焼酎
伝統    ← ◎ → ◎ 商品革新
全国酒   ← ○ → ◎ 地域酒
酒単体   ← ○ → ◎ 食中酒

👉 “富田酒の歴史と阿武山の伏流水を核に、清酒・ビール・焼酎を料理へつなぐ『北摂・食中酒革新型』酒蔵。”

大阪の酒文化で整理すると、

富田は、伊丹・池田と並ぶ古い北摂酒造文化の一角。

壽酒造はその歴史を、

國乃長

として現在へ残している。

しかし位置づけを決めるのは、

歴史だけではない。

1995年にクラフトビールを始める。

清酒酵母でビールを醸す。

純米酒を発酵途中のビールへ加える。

酒粕をもう一度発酵させ、焼酎へ変える。

その一方で、

山田錦35%の大吟醸も造る。

燗向き特別純米も守る。

甘口純米にも挑戦する。

つまりブランド構造は、

富田郷
→ 1822年創醸
→ 國乃長
→ 阿武山伏流水
→ 米旨食中酒
→ とんださけ
→ 大吟醸
→ 1995年クラフトビール
→ 貴醸エール
→ 2006年焼酎
→ 現代の多酒種醸造

という流れを持つ。

重要なのは、

「伝統を守る」と「新しい酒を造る」を対立させていないこと。

壽酒造にとって、

新しい酒へ挑戦すること自体が、

先祖代々の家訓「新しいもの好きであれ」

を受け継ぐ行為なのである。

つまり壽酒造は、

“高槻に残る昔ながらの地酒蔵”

ではない。

“富田酒の二百年を守りながら、日本酒・ビール・焼酎の境界を越えて食卓を醸す蔵”

と捉えるのが最も適切である。


■ コピー

メイン

「富田の水と二百年を、食卓へ。『國乃長』。」

サブ

大阪・高槻、富田。

阿武山の伏流水と、1822年から続く酒造り。

國乃長、とんださけ、大吟醸。
そしてクラフトビール、焼酎へ。

伝統を守るために、新しい酒を造り続ける。


■ 結論

大阪・高槻の富田で1822年から続く壽酒造。かつて北摂を代表する酒どころだった富田の酒文化を「國乃長」に受け継ぎ、阿武山山系の伏流水と米の旨味を基礎に、大吟醸から燗酒、甘口、生原酒まで醸している。さらに1995年からクラフトビール、2006年から粕醪取り焼酎へ領域を拡大し、2025年・2026年には全国新酒鑑評会で金賞を獲得した。

富田の伝統を残すため、酒の可能性を広げ続ける――それが壽酒造である。

壽酒造のテロワールを味わう👇

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壽酒造

阿武山の伏流水と米旨を「國乃長」へ醸す、1822年創醸の酒蔵。

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