松瀬酒造(酒蔵ガイド)
― 滋賀・竜王町の田園地帯で1860年から「松の司」を醸す酒蔵。地下120mを流れる鈴鹿山系・愛知川伏流水と、1988年から続ける契約栽培米を核に、小仕込み・箱麹・低温発酵・低温瓶貯蔵を徹底。山田錦の土壌差、水、蔵付酵母、有機栽培まで掘り下げ、“シンプルな中に奥深い個性”を追求する、滋賀を代表するテロワール型酒蔵。

① 一行定義
竜王の米・水・土を「松の司」へ映す、1860年創業の酒蔵。
② ブランド要約
所在地: 滋賀県蒲生郡竜王町弓削475番地
会社名: 松瀬酒造株式会社
創業: 万延元年・1860年
会社創立: 1963年10月1日
代表取締役: 松瀬 忠幸
杜氏: 石田 敬三
代表銘柄: 松の司
地域: 滋賀県竜王町・弓削
仕込水: 地下120mを流れる鈴鹿山系・愛知川伏流水
主力原料米: 竜王町産山田錦・吟吹雪・渡船、兵庫県東条産山田錦など
契約栽培開始: 1988年
全量契約栽培化: 1992年
環境配慮: 2003年産から無農薬・無化学肥料栽培米に取り組む
酒造規模: 小仕込み・1.2t以下
麹: 箱麹法
酒母: 速醸+生酛
酵母: 社内保存酵母、金沢酵母、熊本酵母ほか
貯蔵: 瓶詰め・5℃以下の低温熟成
直販: 蔵元での直接小売・オンライン直販なし
流通: 特約販売店中心
松瀬酒造が酒造りで重視しているのは、
米。
水。
土。
発酵。
そのすべてを別々に考えるのではなく、
土地から生まれる一つの味
として組み立てることにある。
1988年から竜王町と兵庫県旧東条町で山田錦の契約栽培を開始し、1992年には全原料米を契約栽培へ移行した。さらに無農薬・無化学肥料栽培、有機栽培、土壌別仕込みへと進み、酒米の品種だけでなく**「どの田んぼで育ったか」**まで酒質へ反映している。
👉 “米の名前ではなく、米が育った土地まで酒にする蔵。”
③ 味ポジション
香り :★★★☆☆〜★★★★★
甘味 :★★★☆☆〜★★★★☆
旨味 :★★★★☆〜★★★★★
透明感 :★★★★★
酸 :★★★☆☆〜★★★★☆
キレ :★★★★☆〜★★★★★
コク :★★★★☆
👉 “華美に寄りすぎず、透明な旨味と穏やかな余韻を重ねる『端正・テロワール型』。”
松の司の基本は、
柔らかな香り
+透明感
+米の上品な旨味
+落ち着いた酸
+端正なキレ
+長すぎない余韻
である。
公式が掲げるのは、
「シンプルな味わいの中に奥深いオリジナリティを」
という考え方。
一つの味を強く突出させるより、
水・米・麹・酵母・土地
が自然につながることを重視している。
代表的な純米吟醸は、
柔らかく爽やかな香り
+突出しない旨味
+きれいなふくらみ
+程よく消える余韻。
一方、純米大吟醸「陶酔」は、
爽やかな果実香
+華やかさ
+透明感
+きれいな旨味
を持つ。
👉 “濃い・薄いではなく、どこにも無理のない美しさを目指す酒。”
④ 強み
① 1860年創業、160年以上の酒造史
② 地下120mの鈴鹿山系・愛知川伏流水
③ 1988年から地元で酒米契約栽培
④ 1992年から全原料米を契約栽培化
⑤ 竜王町産山田錦を長期的に育成
⑥ 無農薬・無化学肥料栽培への長期的取り組み
⑦ 有機山田錦・有機渡船まで展開
⑧ 土壌ごとの酒質差を表現する「土壌別仕込」
⑨ 自家精米を含む原料処理へのこだわり
⑩ 箱麹法による麹造り
⑪ 1.2t以下の小仕込み
⑫ 低温でも完全発酵を目指す醪管理
⑬ 速醸と生酛の両方を使い分ける
⑭ 蔵付酵母を使用するAZOLLA
⑮ 5℃以下での瓶詰低温熟成
⑯ 水そのものをテーマにした「みずき」
⑰ 有機JAS認証の「オーガニック純米酒 渡船」
⑱ 竜王産有機山田錦35%「弓削竜王」
⑲ 2007年IWCトロフィー受賞実績
⑳ 2026年全国新酒鑑評会 金賞
㉑ IWC 2026「弓削竜王」Gold
㉒ IWC 2026「オーガニック純米酒 渡船」Gold+滋賀純米トロフィー
㉓ SAKE COMPETITION 2026で3商品GOLD
㉔ 「純米大吟醸 黒」純米大吟醸部門8位
㉕ 「純米吟醸 楽」純米吟醸部門9位
㉖ 「生酛純米酒」純米酒部門5位
👉 “最大の強みは、醸造技術だけでなく、田んぼ・土・水そのものを酒質設計の対象にしていること。”
特に象徴的なのが、
「純米大吟醸 弓削竜王」。
弓削地区で育てた有機山田錦を35%まで磨き、2026年IWCでGoldを獲得した。
また「オーガニック純米酒 渡船」も同年Goldに加え、滋賀純米トロフィーを受賞している。
⑤ 向いている人
・滋賀・竜王の地酒を飲みたい人
・山田錦の産地差を楽しみたい人
・酒米の栽培から日本酒を考えたい人
・テロワールに興味がある人
・有機栽培酒米を重視する人
・派手すぎない純米大吟醸が好きな人
・透明感と米の旨味を両立した酒が好きな人
・生酛にも興味がある人
・酒米と土壌の違いを飲み比べたい人
・蔵付酵母の酒を試したい人
・水の違いを日本酒で感じたい人
・食中酒を重視する人
・高品質な純米酒を日常でも飲みたい人
👉 “銘柄名だけでなく、米・水・土の違いまで酒から読み取りたい人向け。”
選び方は、
弓削竜王
→ 有機山田錦・35%・竜王テロワール
AZOLLA35
→ 無農薬山田錦・蔵付酵母・理想形
黒
→ 東条山田錦・35%・フラッグシップ
陶酔
→ 東条山田錦・45%・上品
純米吟醸
→ バランス・基準
楽
→ 軽快・家飲み
みずき
→ 水・低アル・柔らか
オーガニック渡船
→ 有機・滋賀・土地
生酛純米酒
→ 酸・旨味・食中
と整理すると分かりやすい。
⑥ 向かない人
・強烈な甘旨だけを求める人
・超華やかな吟醸香だけを評価する人
・極端な高酸酒だけを追う人
・蔵元で直接買いたい人
・大量流通でどこでも買える酒を求める人
・酒米や産地の違いに興味がない人
・一口目のインパクトだけを重視する人
👉 “強いキャラクターより、土地・米・水・余韻の繊細な違いを楽しむ人向け。”
松瀬酒造は、蔵元で直接小売を行わず、全国の特約販売店を通じて流通している。
そのため、
観光蔵でその場購入するタイプ
ではなく、
酒そのものと、その背景にある土地を理解して選ぶタイプ
の酒蔵である。
⑦ 商品カテゴリ
■ 松の司 純米大吟醸 弓削竜王
現在の松瀬酒造を象徴する一本。
原料米:滋賀県竜王町弓削産 有機山田錦
精米歩合:35%
酵母:金沢酵母
アルコール:15度
1988年から続く竜王町での酒米づくりが、2024年産からオーガニック栽培へ深化。
2026年IWCでGoldを受賞。
👉 “弓削の土・米・蔵を一つにした、松の司の現在地。”
■ 松の司 純米大吟醸 AZOLLA35
松の司が「一つの理想形」と位置づける酒。
原料米:竜王町産山田錦
栽培:無農薬・無化学肥料
精米歩合:35%
酵母:無添加・蔵付酵母
土地と自然環境への配慮を、米づくりから醸造まで一貫させる。
👉 “自然環境まで酒質の一部として考える松の司。”
■ 松の司 大吟醸 Ultimus
最高級大吟醸領域。
原料米:兵庫県東条産山田錦・特上米
精米歩合:30%
酵母:熊本酵母・きょうかい18号など
モダンで洗練された酒質へ仕上げる。
👉 “松の司が積み重ねてきた吟醸技術を、極限まで磨く一本。”
■ 松の司 純米大吟醸 黒
通常商品のフラッグシップ。
原料米:兵庫県東条産山田錦
精米歩合:35%
2026年SAKE COMPETITION純米大吟醸部門で8位・GOLD。
👉 “東条山田錦で表現する、松の司の王道。”
■ 松の司 純米大吟醸 陶酔
長年造られてきた代表的上位酒。
原料米:兵庫県東条産山田錦
精米歩合:45%
酵母:熊本酵母主体
アルコール:15度
爽やかな果実香と、透明感のあるきれいな旨味を持つ。
👉 “華やかさと透明感を、食卓へ近づけた純米大吟醸。”
■ 竜王山田錦 土壌別仕込
竜王町の山田錦を、
弓削
橋本
林
など圃場・土壌ごとに分けて醸すシリーズ。
弓削は粘土質に砂・砂利を含み、骨格のしっかりした酒質になるとされる。
👉 “同じ山田錦でも、田んぼが変われば酒が変わることを示すシリーズ。”
■ 松の司 純米吟醸
ミドルクラスの基準酒。
原料米:山田錦
精米歩合:55%
酵母:金沢酵母
アルコール:15度
特徴は、
柔らかな香り
+きれいな旨味
+バランス
+程よい余韻。
👉 “松の司の『偏らない美しさ』を最も理解しやすい一本。”
■ 松の司 純米吟醸 楽
家飲み酒として人気の軽快な純米吟醸。
原料米:竜王町産山田錦・吟吹雪
精米歩合:60%
酵母:金沢酵母主体
2026年SAKE COMPETITION純米吟醸部門9位・GOLD。
👉 “高級酒だけではない、日常で飲む松の司。”
■ 松の司 純米吟醸 みずき
「米」ではなく、水を起点に設計した酒。
精米歩合:55%
酵母:きょうかい901号
アルコール:13度
岡鑿泉工業所の柔らかな井戸水を生かし、
ほどけるような口当たり
を目指す。
2024年には美酒コンクール最高得点の美酒 of the Yearを受賞した。
👉 “酒は米の酒であると同時に、水の酒であることを示す一本。”
■ 松の司 オーガニック純米酒 渡船
原料米:滋賀県竜王町産 有機渡船
精米歩合:65%
酵母:無添加・蔵付酵母
酒米だけでなく、酒造工程も有機JAS認証を受けた有機清酒。
2026年IWCでは、
Gold
+滋賀純米トロフィー
を獲得。
👉 “滋賀の米と土地を、オーガニックという方法で次世代へつなぐ酒。”
■ 松の司 生酛純米酒
昔ながらの生酛酒母を用いる純米酒。
米の旨味と酸を引き出しながら、日常の料理へ寄り添う。
2026年SAKE COMPETITION純米酒部門で5位・GOLD。
👉 “吟醸だけではない、松の司の食中酒としての厚み。”
■ 松の司 純米酒
日常食中酒の中心。
上位酒と同じく、米・水・発酵へ丁寧に向き合いながら、
穏やか
+米旨
+食中性
を重視する。
👉 “毎日の食卓で、松の司の思想を味わう一本。”
■ 松の司 産土
蔵の土地と日常性を意識した酒。
公式は、
日々の暮らしの中の「普通」の日本酒
として楽しむことを提案している。
👉 “特別な日に飲むのではなく、土地の日常へ戻る松の司。”
■ 松の司 純米酒 尾花
秋の熟成をテーマにした商品。
日本酒本来の魅力である、
熟成
を季節の味として表現する。
👉 “新酒だけでなく、時間まで酒にする松の司。”
■ 季節酒
純米吟醸 あらばしり
→ 新酒・フレッシュ
純米吟醸 しぼりたて楽
→ 軽快・新酒
huit
→ 季節限定・新しい表現
などを展開。
👉 “土地の酒を、季節の時間軸でも楽しませる。”
⑧ 飲み方
冷酒 :◎◎
常温 :◎◎
ぬる燗 :◎◎
熱燗 :○〜◎
ワイングラス :◎◎
生酛 :◎◎
酒米比較 :◎◎
食中酒 :◎◎
👉 純米大吟醸・みずきは冷酒〜ワイングラス。純米吟醸は冷酒〜常温。生酛純米・純米酒は常温〜燗まで楽しむと旨味が広がる。
■ 料理との合わせ方
弓削竜王・AZOLLA・黒
→ 寿司、白身魚、会席料理、近江牛
陶酔
→ 魚介、天ぷら、焼き茄子
純米吟醸
→ 焼魚、鶏料理、野菜料理
楽
→ 家庭料理、揚げ物、鍋
みずき
→ 白身魚、前菜、豆腐、淡い出汁
オーガニック渡船
→ 近江野菜、発酵食品、湖魚
生酛純米酒
→ 煮物、肉料理、根菜、発酵食品
純米酒
→ 焼魚、里芋、豆乳料理、日常の惣菜
滋賀なら、
鮒寿司
湖魚
近江牛
赤こんにゃく
近江野菜
日野菜漬
発酵食品
との相性が分かりやすい。
👉 “竜王の米と水を、近江の食卓で味わう。”
⑨ 位置づけ
クラシック ← ◎ → ◎ モダン
穏やか ← ◎ → ○ 華やか
淡麗 ← ◎ → ○ 濃醇
辛口 ← ◎ → ○ 甘旨口
軽快 ← ◎ → ◎ 旨味
日常酒 ← ◎ → ◎ 最高級酒
伝統 ← ◎ → ◎ 研究開発
酒米 ← ◎ → ◎ 土壌表現
慣行栽培 ← ○ → ◎ 有機栽培
全国銘柄 ← ○ → ◎ 地域テロワール
👉 “竜王の米・水・土を醸造技術で精密に翻訳する『近江テロワール精醸型』酒蔵。”
浪乃音酒造と比較すると、
浪乃音酒造・浪乃音
=「琵琶湖・家族醸造・小仕込み・酒米多様性・次世代」
松瀬酒造・松の司
=「竜王・契約栽培・山田錦・水・土壌・有機・精密醸造」
と整理できる。
松瀬酒造のブランド構造は、
鈴鹿山系
→ 愛知川伏流水
→ 竜王町
→ 1860年創業
→ 契約栽培
→ 山田錦
→ 土壌
→ 水
→ 小仕込み
→ 生酛・吟醸
→ 有機栽培
→ 松の司
という流れを持つ。
重要なのは、
「良い山田錦を使う」だけで終わらないこと。
どの土地か。
どの土か。
どの水か。
どう育てたか。
どの酵母か。
どの温度で醸したか。
それらを一つずつ見つめながら、
“松の司らしい一杯”
へまとめていく。
つまり松瀬酒造は、
“高品質な山田錦の酒を造る蔵”
ではない。
“竜王という土地の個性を、米・水・土から酒へ翻訳する蔵”
と捉えるのが最も適切である。
■ コピー
メイン
「米を知り、水を知り、土地を醸す。『松の司』。」
サブ
滋賀・竜王。
地下深くを流れる水。
田んぼごとに異なる土。
そこで育つ山田錦。
松瀬酒造は、その違いを消さずに酒へ映す。
小さく仕込み、低温で醸し、静かに熟成させる。
酒米ではなく、田んぼまで味わう。
それが「松の司」である。
■ 結論
滋賀・竜王で1860年から続く松瀬酒造。
地下120mの伏流水と契約栽培米を基礎に、土壌・水・有機栽培・生酛まで掘り下げ、「松の司」という一杯へまとめている。
米を磨くだけでなく、土地そのものを酒へ――それが松瀬酒造である。
松瀬酒造のテロワールを味わう👇
| イメージ | 酒蔵 | 説明 | リンク |
|
1
![]() |
松瀬酒造 |
竜王の米・水・土を「松の司」へ映す、1860年創業の酒蔵。 |

