英君酒造(酒蔵ガイド)
― 由比・入山の名水「桜野沢」と蔵内井戸水、静岡酵母、山田錦・五百万石・雄町・誉富士を使い、「英君」を醸す1881年創業の静岡吟醸蔵。爽やかな香り、やさしい旨味、きれいなキレを軸に、すべての酒を“料理と寄り添う食中酒”へまとめる由比の実力蔵。 ―

① 一行定義
英君酒造は、静岡県静岡市清水区由比入山で「英君」を醸す、1881年創業・名水「桜野沢」・蔵内井戸水・静岡酵母・山田錦・五百万石・雄町・誉富士・静岡型吟醸造り・食中酒設計・手造りの蒸米・酒母・製麹を強みとする、由比を代表する静岡吟醸蔵。
② ブランド要約
所在地: 静岡県静岡市清水区由比入山2152
会社名: 英君酒造株式会社
創業: 明治14年・1881年
創業時名称: 望月酒造店
創業者: 望月昌策
代表者: 望月裕祐
杜氏: 粒来保彦
代表銘柄: 英君
地域: 静岡市清水区由比・入山地区
水: 名水「桜野沢」+蔵内古井戸の水
主要酒米: 山田錦・五百万石・雄町・誉富士
主要酵母: 静岡酵母 HD-101・5MT-14・CA-50・NEW-5など
製法: 長期低温発酵による静岡型吟醸造り
思想: 「どんな食事にも自然と馴染む食中酒」
見学: 基本的に不可
👉 “水・米・静岡酵母を変えても、最後は『飲み飽きしない食中酒』へ戻る蔵。”
英君酒造は1881年、望月酒造店として創業した。
蔵名「英君」は、創業年に日英関係の時代背景があったことに加え、徳川の「英いでた君主」にあやかって名付けられたと公式は説明している。創業者・望月昌策は「品質第一」を掲げ、全国から優れた酒米を求めて酒造りを行った。
現在も設備の合理化を進める一方、
蒸米
酒母
製麹
など酒質を大きく左右する工程では、人の手を残している。
③ 味ポジション
香り :★★★★☆〜★★★★★
甘味 :★★★☆☆〜★★★★☆
旨味 :★★★★☆
透明感 :★★★★☆〜★★★★★
キレ :★★★★☆〜★★★★★
コク :★★★☆☆〜★★★★☆
👉 “柔らかな吟醸香と米の旨味を、爽やかな酸とキレで料理へつなぐ『淡麗豊潤』型。”
英君酒造自身が掲げる酒質表現は、
「淡麗豊潤」
である。
これは単純な淡麗辛口ではない。
香りは穏やか。
口当たりは柔らかい。
米の旨味は残す。
後口は軽快。
という構造である。
特に代表的な3本は酒米ごとの差が明確。
紫の英君・山田錦
=葡萄を思わせる果実感・甘旨・ジューシー
橙の英君・雄町
=柑橘系の香り・やや甘味・心地よい酸
緑の英君・五百万石
=爽やかな香り・軽快・キレ
となり、同じ蔵でも酒米と静岡酵母の組み合わせによって味を描き分けている。
④ 強み
① 1881年創業、140年以上の歴史
② 由比・入山の名水「桜野沢」を仕込み水に使用
③ 蔵内で発見された古井戸水も仕込みに活用
④ 静岡酵母を全商品レベルで積極活用
⑤ 静岡型吟醸造り・長期低温発酵を確立
⑥ 山田錦・五百万石・雄町・誉富士を明確に使い分ける
⑦ 酒米と酵母の組み合わせで味の違いを表現
⑧ 蒸米・酒母・製麹など重要工程は手造りを維持
⑨ 「料理と寄り添う酒」という明快なブランド思想
⑩ 純米大吟醸から本醸造まで酒質思想が一貫
⑪ 大吟醸では兵庫県産山田錦35%精米を採用
⑫ 人間国宝・芹沢銈介ゆかりの「大吟醸いろは」
⑬ 2026年Kura Masterで紫・橙の英君が金賞
⑭ 紫の英君は2022・2023年Kura Masterプラチナ賞
⑮ 地域の魚介・由比の食文化と極めて結びつけやすい酒質
👉 “静岡酵母を使うだけでなく、酒米ごとに酵母を選び分け、食中酒へ最適化できる。”
2026年Kura Masterでは、
紫の英君 純米吟醸 山田錦
橙の英君 純米吟醸 雄町
が純米酒51〜65%部門で金賞。
紫の英君は2022年・2023年にプラチナ賞、橙の英君も2023年にプラチナ賞を受賞している。
この実績は、
高級大吟醸だけが評価される蔵ではない
ことを示している。
日常に近い純米吟醸を主戦場に、世界評価まで得ている点が英君酒造の強さである。
⑤ 向いている人
・静岡、由比の地酒を飲みたい人
・静岡酵母の酒を比較したい人
・香りが華やかすぎない酒を好む人
・透明感とキレを重視する人
・山田錦・雄町・五百万石を飲み比べたい人
・誉富士の酒に興味がある人
・刺身や魚料理と合わせたい人
・桜えびやしらすと日本酒を合わせたい人
・純米吟醸を普段の食事で楽しみたい人
・甘旨系でも後口が重くない酒が好きな人
・静岡型吟醸造りを知りたい人
・食中酒を重視する人
・純米から本醸造まで幅広く飲みたい人
👉 “香りだけでなく、料理と一緒に飲んだ時の完成度を重視する人向け。”
特に、
山田錦
雄町
五百万石
を同じ「英君」という銘柄の中で比較できる点は大きい。
酒米による違いを学ぶ入口としても分かりやすい酒蔵である。
⑥ 向かない人
・極端な超甘口だけを求める人
・強烈な高酸酒だけを好む人
・無濾過生原酒だけを追う人
・低アルコール酒だけを求める人
・熟成古酒を中心に飲みたい人
・山廃・生酛だけを重視する人
・大型観光酒蔵を期待する人
・酒蔵見学を最優先する人
👉 “派手な個性を一杯で見せる酒より、食事の中で良さが続く酒を評価する人向け。”
静岡県酒造組合では蔵見学を「基本的に不可」としているため、
観光酒蔵
というより、
酒販店・飲食店・家庭の食卓で評価される蔵
と考える方が適切である。
⑦ 商品カテゴリ
■ 大吟醸 いろは
英君酒造の歴史と格を象徴する上位酒。
原料米:兵庫県産山田錦100%
精米歩合:35%
酵母:静岡酵母 HD-101
全国新酒鑑評会金賞受賞時、人間国宝の染色工芸家・芹沢銈介から贈られた意匠をラベルに使用。
白陶器に収める特別仕様となっている。
👉 “静岡の工芸文化と吟醸技術まで一本に重ねた英君最高級酒。”
■ 大吟醸 英君
英君酒造を代表する王道大吟醸。
原料米:兵庫県産山田錦100%
精米歩合:35%
酵母:静岡酵母 HD-101
華やかな吟醸香だけではなく、山田錦の旨味と後口のキレを意識した酒。
👉 “静岡型吟醸造りを最も高い精米領域で表現する一本。”
■ 英君 純米大吟醸
大吟醸と同じく、
兵庫県産山田錦100%
精米歩合35%
静岡酵母HD-101
という高規格で仕込む純米大吟醸。
アルコール添加をせず、
山田錦由来の旨味
+上品な香り
+透明感
をより純米的に表現する。
👉 “米の輪郭を残した英君の純米最高峰。”
■ 紫の英君 純米吟醸 山田錦
英君酒造の代表商品。
原料米:岡山県産山田錦100%
精米歩合:55%
酵母:静岡酵母 5MT-14
特徴は、
葡萄系の果実感
+甘旨
+ジューシーさ
+キレ
である。
2026年Kura Master金賞。
過去には2022・2023年プラチナ賞も受賞。
👉 “英君の華やか・甘旨側を最も分かりやすく表す一本。”
■ 橙の英君 純米吟醸 雄町
原料米:岡山県産備前雄町100%
精米歩合:55%
酵母:静岡酵母 CA-50
静岡酵母の中でも比較的華やかな香りを出すCA-50を使用。
柑橘系の香り
+やや甘味
+雄町の旨味
+心地よい酸
を持つ。
2026年Kura Master金賞。
👉 “雄町の厚みを、酸と柑橘感で爽やかにまとめる英君。”
■ 緑の英君 純米吟醸 五百万石
英君の中核酒。
原料米:五百万石100%
精米歩合:55%
酵母:静岡酵母 HD-101
低温発酵による静岡型吟醸造りで、
メロン・熟したバナナを思わせる穏やかな香り
+透明感
+爽やかな旨味
+良いキレ
を持つ。
👉 “初めて英君を飲むなら、蔵の基本思想を最も理解しやすい一本。”
■ 特別純米酒 誉富士
静岡県産酒造好適米「誉富士」を100%使用。
精米歩合:60%
純米酒ながら、静岡型吟醸造りで仕込む。
特徴は、
米の旨味
+穏やかな吟醸香
+すっきりした喉ごし
である。
👉 “静岡の米・静岡酵母・由比の水を最も地域酒らしく結ぶ一本。”
■ 辛口純米酒
限定流通品。
精米歩合:60%
酵母:静岡酵母 NEW-5
蔵が掲げる、
「料理と寄り添う酒」
を日常酒として最も直接的に表現。
料理を選ばず、気負わず飲める設計となっている。
👉 “毎日の食卓で英君の思想を体験する酒。”
■ 山廃純米酒 愛山
英君の中では比較的クラシック側に位置する純米酒。
希少酒米「愛山」と山廃仕込みを組み合わせ、
旨味
+酸
+厚み
+熟成感
を楽しむ。
👉 “爽やかな静岡吟醸とは違う、英君の深い旨味側。”
■ 特別本醸造 英君
原料米:五百万石100%
精米歩合:60%
酵母:静岡酵母 HD-101
吟醸造りを用い、
クリア
+シャープ
+高いキレ
を表現。
蔵自身も吟醸酒として商品化できる酒質としながら、普段飲みしやすい本醸造規格で販売している。
👉 “価格帯を下げても、酒質思想を下げない英君の日常酒。”
■ 辛口本醸造
限定流通品。
精米歩合60%
静岡酵母NEW-5
で仕込み、
食事を邪魔しない辛口日常酒として設計される。
■ 純米吟醸 生酒
春先に搾った酒を火入れせず、そのまま瓶詰め。
精米歩合:60%
酵母:静岡酵母 NEW-5
特徴は、
フレッシュ
+すっきり
+爽やかな吟醸香
+キレ
である。
👉 “火入れ英君との違いを楽しめる鮮度型商品。”
■ 特別本醸造 生酒
五百万石60%精米、静岡酵母HD-101。
本醸造の軽快さと生酒の鮮度を重ねる300ml商品。
👉 “日本酒初心者にも入りやすい、小容量のフレッシュ英君。”
⑧ 飲み方
冷酒 :◎◎
常温 :◎◎
ぬる燗 :◎◎
熱燗 :○〜◎
ワイングラス:◎◎
食中酒 :◎◎
👉 紫・橙・緑の純米吟醸は冷酒中心。誉富士・純米・本醸造は常温〜燗まで。基本は料理と合わせる。
■ 料理との合わせ方
大吟醸 いろは
→ 白身魚、寿司、上質な和食
純米大吟醸
→ 鯛、鮪、天ぷら、会席料理
紫の英君 山田錦
→ 鮪、鴨、肉料理、チーズ
橙の英君 雄町
→ 桜えび、白身魚、魚介マリネ、天ぷら
緑の英君 五百万石
→ 生しらす、寿司、刺身、冷奴
特別純米 誉富士
→ 桜えび、焼魚、静岡おでん、黒はんぺん
辛口純米
→ 刺身、焼鳥、煮物、家庭料理
山廃純米 愛山
→ 鰻、肉料理、煮込み、発酵食品
特別本醸造
→ 干物、焼魚、鍋、豆腐料理
由比・清水なら、
由比桜えび
生しらす
鮪
鰹
太刀魚
黒はんぺん
静岡おでん
しぞーかおでん
わさび
鰻
干物
などとの組み合わせが分かりやすい。
👉 “由比の水で醸した酒を、駿河湾の魚で飲む。”
これが英君を最も土地に近い形で楽しむ方法である。
⑨ 位置づけ
クラシック ← ○ → ◎ モダン
穏やか ← ◎ → ○ 華やか
淡麗 ← ◎ → ○ 濃醇
辛口 ← ◎ → ○ 甘旨口
軽快 ← ◎ → ○ コク
単一酒米 ← ○ → ◎ 酒米比較
香り酒 ← ○ → ◎ 食中酒
地域酒 ← ◎ → ◎ 全国・海外評価
👉 “桜野沢の水・静岡酵母・酒米別設計・食中性を一本につなぐ『由比の静岡吟醸』型酒蔵。”
静岡県内で比較すると、
御殿場石川酒造・雪解/榮/来光
=「富士山伏流水・新設蔵・オール御殿場・テロワール構築」
静岡平喜酒造・喜平 静岡蔵
=「安倍川伏流水・少量純米・県内流通・品質特化」
初亀醸造・初亀
=「1636年・東条山田錦・高級酒市場・熟成・静岡クラシック」
英君酒造・英君
=「由比・桜野沢・静岡酵母・山田錦/雄町/五百万石・淡麗豊潤・食中酒」
と整理できる。
英君酒造のブランド構造は、
由比入山
→ 桜野沢
→ 蔵内井戸水
→ 静岡酵母
→ 山田錦・雄町・五百万石・誉富士
→ 長期低温発酵
→ 静岡型吟醸造り
→ 英君
→ 駿河湾の魚介
という非常に一貫した流れを持つ。
英君酒造の最大の特徴は、
酒米ごとの差をはっきり見せながら、ブランド全体としては味を散らさないこと。
紫は甘旨。
橙は酸。
緑は爽快。
誉富士は旨味。
しかし最後は、
料理と自然に馴染む。
そこへ戻ってくる。
つまり英君酒造は、
“香りの良い静岡吟醸を造る蔵”
というより、
“静岡酵母と酒米の個性を、食卓で完成する酒へ翻訳する蔵”
と評価するのが最も適切である。
■ コピー
メイン
「由比の水で、料理に寄り添う。静岡吟醸『英君』。」
サブ
静岡県・由比入山。駿河湾を望むこの地で、英君酒造は1881年から酒を醸してきた。
名水「桜野沢」と蔵内の古井戸水に、静岡酵母、山田錦・雄町・五百万石・誉富士を重ね、米ごとに異なる表情を引き出す。葡萄のような紫、柑橘を思わせる橙、爽やかな緑。
それぞれ個性は違っても、目指すものは一つ。桜えびやしらす、鮪、鰹、焼魚、静岡おでんなど、土地の料理にそっと寄り添い、飲み飽きず、自然に杯が進む酒である。
名水、静岡酵母、酒米、低温発酵、手造り。そのすべてを一杯に込めて、英君酒造は由比の水と静岡の食を、食中酒としてつないでいる。
■ 結論
由比入山の名水と静岡酵母が、山田錦・雄町・五百万石・誉富士を英君へと醸す。
やさしい香り、豊かな旨味、澄んだキレ――酒は料理と寄り添い、食卓に静かな余韻を残す。
桜えび、しらす、駿河湾の魚とともに、英君は由比の風土を一杯に映す。
英君酒造のテロワールを味わう👇
| イメージ | 酒蔵 | 説明 | リンク |
|
1
![]() |
英君酒造 |
英君酒造は、静岡県静岡市清水区由比入山で「英君」を醸す、1881年創業・名水「桜野沢」・蔵内井戸水・静岡酵母・山田錦・五百万石・雄町・誉富士・静岡型吟醸造り・食中酒設計・手造りの蒸米・酒母・製麹を強みとする、由比を代表する静岡吟醸蔵。 |

